ソフトバンク・達川光男ヘッドコーチ(63)が5日、今季限りでの現役引退を表明した広島・新井貴浩内野手(41)の野球人生をたたえた。

 広島の一軍監督に就任した1999年に新井がデビュー。ドラフト6位で入ってきた新井を2年間指導した。入団当初はプレースピード、正確性に欠け守備に難があった新井を見て「どうしてプロに入ってきたのかなと思った。3年以内に絶対クビになると思った」という。それでも新井は不断の努力でプロの世界を生き抜いた。

「今じゃ言えないようなキツイ言葉をかけても『ハイっ!』と言って練習していた。野球に対して素直に一生懸命努力できる選手だった。今まで見た中で一番バットを振った選手。プロ野球選手は、体が強かったら何とかなると思わせてくれた選手だった」と弱音を吐かず、時にケガを押してプレーを続けた強い精神力に脱帽した。

 そして、何よりその人間性に敬意を表した。「人間としても素晴らしかった。(2007年オフに阪神へ)FAで出て行った時にいろいろと言われたが、同業者の間で新井の悪口を聞いたことは一度もなかった。努力をしているから、ミスをしても許してもらえた。本当に純真で真面目な選手。頭も賢かったが、野球に対してはばかになってできる選手だった。人の心を読める人間だったから配球も読めたのだと思う。豪快さの中に緻密さがあった」

 同じ広島出身で自慢の後輩ゆえに、ねぎらう言葉は温かかった。「よく20年頑張ったなと思う。その努力に敬意を表したい。広島弁で『20年、ようやったのおぅ』と言いたい。衣笠(祥雄=今年4月死去)さんも野球の神様に好かれたと言われたが、新井もそうだったと思う。そうじゃないと、神様はこんなに長く新井を野球界に残していない。最後は指導者になってほしい。新井以上に下手なヤツを新井以上にしてほしい。それが新井の使命だと思う。きっといい指導者になるよ」。“努力はうそをつかない”を体現した男の、第2の野球人生を大いに期待した。