<広島6-5ヤクルト(31日)>ヤクルトの山田哲人内野手(26)が31日の広島戦(神宮)の7回に今季30個目の盗塁を決め、同一シーズンで打率3割、30本塁打、30盗塁をマークする「トリプルスリー」の条件を現時点で満たした。今季達成となれば3度目となり、日本球界では前例がなく、大リーグでもバリー・ボンズだけという偉業。チーム内からは「もっと評価されるべき」との声が上がっている。

 7回の二盗で大台に到達した山田哲は「30盗塁は目標にしていたので良かった」と話したが、チームは逆転負け。表情は冴えなかった。青木の3ランで勝ち越した直後に左前打で出塁。盗塁を警戒する広島の野村から再三、けん制されたが、スタンドからの「走れ! 走れ! 山田」の大歓声に奮起。「行くと決めていた」という2球目で悠々と二盗に成功した。

 30本塁打は24日のDeNA戦で到達。打率は3割1分4厘で、規定打席をすでに満たしている。チームは残り29試合。2位争いの最中ということもあり、記録を考慮して休養させるかどうかは首脳陣の判断次第だが、日本プロ野球界では前人未踏の大記録。打率3割キープはまず間違いないだろう。

 2015年、16年に続く3度目のトリプルスリーを決定的にした山田哲に、師匠の杉村巡回コーチは「いい成績を長く続けるのは大変なこと。山田はもっと評価されてもいいと思う。(トリプルスリー達成は)MVPに値すること」と力説している。

 MVPは優勝チームから選ばれることが多く、セ・リーグでは過去10年で優勝チーム以外から選出されたのは2013年に王貞治(巨人)のシーズン55本塁打を抜き、60本塁打で日本記録を更新したバレンティン(ヤクルト)だけ。だが、杉村コーチは16年にメジャーで打率3割1分5厘、29本塁打、30盗塁と“ほぼトリプルスリー”の数字を残してMVPに選ばれたマイク・トラウト(エンゼルス)を例にこうも話す。

「トラウトはチームの成績が(地区)4位だったけどMVPを取った。メジャーリーグでは出塁率と長打力のある選手はOPSを使って高く評価されている。山田はOPSが高い。もっと騒がれてもいい成績」

 出塁率と長打率を足し合わせた値であるOPSで山田哲は1・034でリーグ3位。1、2位には1・161の丸、1・108の鈴木の広島勢が立ちはだかる。日本初、メジャーでもバリー・ボンズしか達成したことのない「3度目のトリプルスリー」というレジェンド級の活躍はどう評価されるか。