第100回全国高校野球選手権大会は16日、3回戦4試合が行われ、報徳学園(東兵庫)、浦和学院(南埼玉)、済美(愛媛)、大阪桐蔭(北大阪)が準々決勝へと進出した。「ビッグ3」として前評判が高かった大阪桐蔭の根尾昂内野手(3年)、藤原恭大外野手(3年)、報徳学園の小園海斗内野手(3年)は揃ってベスト8に駒を進めたが、プロ野球のスカウト陣は、なかでも根尾を大絶賛。「二刀流」だけでなく、前代未聞の仰天プランを描くスカウトまで出現した。根尾の“NEOプラン”とは――。 

 大多数のスカウトは「やっぱり根尾、藤原、小園の3人は別格。ドラフト1位か外れ1位で消えるのは間違いない」と口を揃える。阪神・畑山俊二チーフアマスカウトは「スカウトは潜在能力と発揮能力を見る。潜在能力があってもそれを発揮できるかどうかの見極めが大事。それはプロで鍛えてできるものでもない。根尾、藤原、小園は下級生のときからそれができている。それを持ってる子は早くから活躍できる」と太鼓判を押す。

 その3選手の中でも根尾は群を抜いている。中学時代はスキーの全国大会で優勝するなど、卓越した身体能力を持っており、本格的に野球に打ち込んだのは高校からとあって、楽天・仁村徹スカウト副部長は「スキーをやったり、他の選手と比べてちゃんと野球をやってこなくて、これだからね。去年の夏、今年の春、夏と見てきて守備やピッチングとかの成長はものすごい。投手にしろ、野手にしろ、このままどっちかをやり込めば、どこまでいくのか分からない。けがもしづらいし、悪いところが見当たらない」とベタ褒めだ。

「二刀流」の根尾だが、スカウト陣からは野手として評価する声の方が多いのも事実で、日本ハム・山田正雄スカウト顧問は「今宮(ソフトバンク)タイプ。坂本勇(巨人)が2年目に出てきたように、高卒ながら早く一軍に定着する可能性がある。遊撃手というポジションだけに各球団の評価は非常に高い」とほれぼれしている。

 中日・中田宗男編成部アマスカウトディレクターは「ほとんどが野手評価だけど、根尾の場合はどっちかに固定しない方がいいかもしれない」と、当面は投手、野手どちらの可能性も残しながら、見守りたいとしたが「ボールに対する飛びつきの判断力とか遊撃手として格段によくなっていて、確かに伸びしろは遊撃手の方があるのかなと思うけど、当然外野もできる。あまり固定観念にとらわれず、いろいろなポジションで見てみたい」と分析している。

 中でも仁村スカウトは根尾が野手一本化した場合の秘策を披露。「今は左打ちだけど、右で打てるようになれば面白いと思う。右投げ右打ちの打者が左打者にスイッチすることはあるけど、根尾君のように右投げ左打ちからスイッチになることはなかなかない。それができる可能性も秘めている。今までにこういうタイプは見たことがない。僕らにはその可能性が分からないほど、ものすごく可能性を感じる。どこまでうまくなるのか、どこまでいくのか面白い存在だね」と熱く語った。

 根尾によると「左で打ち始めたのは小2から。右で打ったことはあんまりないです」とのことだが、異例の両打ちプランを本紙がぶつけると「右でも振るだけだったら自信があります」とニヤリ。その超人じみたボディーバランスから、野手に専念すれば左だけでなく、右の大砲にもなれる。“NEO”の底知れぬポテンシャルに仁村スカウトは胸を躍らせている。

 一方、藤原の評価もやはり高い。山田スカウトは「西武の秋山や元広島の前田智を思い出させる。走攻守どれもレベルが高い。『高卒外野手』ながら、その能力は疑いようがない」と舌を巻けば、中田スカウトは「すべてが高いレベルで備わっている選手。バッターは7割は打てないが、守備、走力でカバーできる。調子に左右されず使えるのは魅力。3割30本30盗塁を目指せるタイプの選手」と絶賛する。

 小園の成長に目を丸くするのは仁村スカウトで「体も大きくなっているし、何といっても肩と足が抜群で走攻守、精神面などいろいろ考えても本当にいい選手。高校生ではない。今すぐにプロでも我慢して使ってもできるぐらい能力はある。打てて走れて守れてと、そういうショートはなかなかいない。トリプルスリーができる能力を持っている。山田哲(ヤクルト)や坂本勇を超えられる能力はある」と言えば、中田スカウトは「プロ入りならレギュラーはほとんど確約されている」とうなっている。

【準々決勝・浦和学院戦がヤマ場】この日の根尾は3打数1安打1四球で、今大会は打率5割と好調を維持している。藤原は4打数無安打で今大会の打率を3割8厘に落としたが、チームは横川(3年)―柿木(3年)のリレーで3―1で高岡商(富山)に競り勝った。準々決勝では浦和学院との対戦が決まり、2度目の春夏連覇へ大きなヤマ場となりそうだ。

 一方、小園は5打数1安打1盗塁。それでも今大会の打率は4割4分4厘と打ちまくっている。チームは7―2で愛工大名電(西愛知)に快勝し、こちらは準々決勝で済美との対戦が決まった。