セ・リーグは今年も広島独走の様相を呈してきた。追走の一番手と見られていた巨人は27日のマツダスタジアムでの直接対決第2ラウンドでも6―8で競り負けて3位転落。ついに7・5ゲーム差をつけられた。

 今季の広島は決して万全ではない。チーム打率こそリーグ2位だが、防御率は4・22で同5位。昨年同時期にダントツだったチーム盗塁数も53からリーグ3位の37に激減し、今年は交流戦も7勝11敗と負け越している。それでも首位にいられるのは選手の意識が他チームより高いからだろう。27日のCG戦でも象徴的な一幕があった。

 7試合ぶりにスタメン出場した広島・新井貴浩内野手(41)は初回に適時打を放つなど2安打1打点だっただけでなく、足でも魅せた。6―3の5回無死一、二塁、走者を進める右打ちの意識もむなしく打球は遊ゴロとなってしまったが、新井は一塁へ全力疾走。併殺を阻止して一死一、三塁の好機を演出し、会沢の二ゴロで事実上の決勝点となる7点目を奪う結果となった。試合後のベテランは「久しぶりのスタメン? 問題なかった。これからもいい準備をしていきたい」と終始笑顔で、5回の走塁についても「当然のことをやっただけ」と特に気にする様子はなかった。

 それに比べて2点を追う8回二死一塁で代打出場した巨人・阿部慎之助内野手(39)はジャクソンの足元を襲う強烈なピッチャー返しを放ちながら、一塁まで“よちよち走り”してアウトになった。カープ関係者が胸を張って言った。「安打が出なくても何とか点を取るというのは優勝した昨年、一昨年から掲げていたこと。それをああいう(併殺を阻止する)プレーで新井さんが体現してくれたのは大きい」。緒方孝市監督(49)も「新井が勝負強い打撃を見せてくれた。それから、つながりのある攻撃を意識してやってくれているのは頼もしいし、ありがたいこと」と最敬礼だ。

 新井が打席に入る際の登場曲はスキマスイッチの「全力少年」。足の速さは新井も阿部も似たようなもの。おじさんがおじさんなりの全力を尽くすからこそ広島は強い。