ピンチになればなるほどギアが上がる。中日・松坂大輔投手(37)が8日、ソフトバンク戦(ナゴヤドーム)に先発し、粘りの投球を見せた。初回、二死から中村晃、柳田に連続四球。続く上林の一ゴロをビシエドがはじく失策でいきなり満塁の大ピンチを招く。しかし、マウンドの松坂に慌てる様子はみじんもない。松田を“伝家の宝刀”カットボールの連投で平凡な中飛に打ち取ると涼しい顔でベンチに引き揚げた。

 2回には先頭の甲斐に四球、千賀の二塁へのボテボテのゴロが内野安打になる不運もあり一死一、二塁。さらに明石を四球で歩かせ、またも満塁とする。ここで塚田の二ゴロ野選の間に1点を許すが、それ以上傷口を広げないのが松坂。中村晃、柳田のクリーンアップから連続三振を奪い、最少失点でしのいだ。

 今季の松坂はこの日も含め満塁の状況で9度投球しているが、その内容は8打数0安打(うち併殺が2度)で四球は1度。適時打どころか犠飛さえ許していない。「走者を出してもホームに返さなければいい」。まさしく有言実行の快投。平成の怪物にとって、満塁の状況は自身を奮い立たすにすぎない。

 3、4回と走者を出すが得点は許さず。球数が100球にさしかかった5回になるとマウンド後方で両足を伸ばすしぐさを始める。5月13日の巨人戦(東京ドーム)で右ふくらはぎの強い張りで降板。これは西武時代からの松坂の癖で、この日も足に張りが出たようだ。ただこの張りは決して悪いことではない。「それだけ蹴れているということ」と松坂は分析している。思い切り投げることができているから足に負担がかかる。状態が全盛期に近づいている証しでもある。

 足を気にしながらもこの日104球目となるカットボールで甲斐を空振り三振に抑え5回を投げ終えた。アクシデントもあったが、勝利投手の権利を持って降板。松坂は「早い回でマウンドを下りてしまって申し訳ないです」と反省を口にしたが、古巣相手に復活した姿は十分に見せつけた。