野球界にも欲しい! イニエスタ級助っ人

2018年06月06日 11時00分

東京ドームを訪れたイニエスタ。右は三木谷会長、左は梨田監督

【広瀬真徳 球界こぼれ話】たった一人の大物の加入がリーグを活性させる――。

 改めてそう感じさせられた出来事が先月末、サッカーJ1ヴィッセル神戸に加入したスペイン代表MFアンドレス・イニエスタ(34)の電撃移籍である。

 Jリーグ史上最高額となる年俸32億5000万円で3年契約。名門FCバルセロナの中心選手として長年サッカー界をけん引してきた英雄だ。そんな選手がロシアW杯後の7月からJリーグでプレーする。ファンでなくとも興味が湧くのは当然だろう。

 実際「イニエスタ旋風」は野球界も席巻した。先月24日の東京ドームでの楽天―オリックス戦は本人が来場するとあって、試合前から大勢の報道陣が集結。ベンチ裏の通路は関係者であふれかえった。普段の同カードではめったに見られない光景に球団関係者も思わず苦笑い。「野球界でもイニエスタのような大物がメジャーから来てくれれば」と複雑な表情で話した。

 確かにここ数年、日本球界には超大物助っ人の来日が少ない。理由は日本球団側の「リスク回避」が影響しているといわれる。大金を費やし大物選手を獲得しても1年目から結果を残す保証はない。それなら日本で実績を残した選手や日本で大化けしそうなメジャー予備軍を獲得した方が費用対効果が見込めるからだ。

 ただ、某メジャースカウトに聞くと「近年は日本側だけの問題ではない」とこんな話をしてくれた。

「昔のメジャー選手は『日本に行けば稼げるし活躍できる』という考えだったが、今の選手は違う。田中(ヤンキース)や大谷(エンゼルス)ら日本人選手が活躍する姿を目の当たりにしているので、日本の野球レベルを脅威に感じている。そうなると代理人は『メジャーより年俸が抑えられる日本に行くメリットがあるのか』と移籍に消極的になり、代わりに日本でブレークさせようとマイナー選手を積極的に売り込む。この流れが定着しているので現役大物選手が来日しづらいのです」

 かつてはメジャー218本のB・ホーナー(87年=ヤクルト)や、同162勝のB・ガリクソン(巨人=88年)など、毎年のように実績のある大物助っ人が来日。元阪神のM・グリーンウェルのようにわずか7試合で途中帰国した失敗例もあるとはいえ、助っ人が球界を盛り上げた。ところが昨今は2013年に楽天入りしたA・ジョーンズと17年に独立リーグの高知に加入したM・ラミレスぐらい。その両者も全盛期を過ぎての来日だった。これでは「寂しい」の一語に尽きる。

 獲得リスクがあっても超大物選手は存在だけで周囲を高揚させる。野球離れが叫ばれる今、球界にも「イニエスタ級」の助っ人を期待したいのだが…。

 ☆ひろせ・まさのり 1973年愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心に、ゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。