最下位に低迷するヤクルトにあって、ベテラン・坂口智隆外野手(33)が打ちまくっている。打率は23日現在、リーグトップの3割5分6厘。好調の理由を直撃した。

 今季の坂口は中学時代以来という一塁を守っているのだが、春季キャンプで首脳陣から通達された時は「そりゃ、グラブだって急きょ、メーカーさんに用意してもらいましたからね。もちろんオーダーのファーストミットなんて間に合うわけない。すぐに用意できる既製のファーストミットを取り寄せてもらいましたよ」と“寝耳に水”だったという。

 それでもキャンプ、オープン戦をこなし開幕戦を「6番・一塁」で迎えた。「開幕したら緊張感も違うし、気持ちが落ち着くことがなかったですよね。守備でのサインプレーもほぼすべて一塁は絡んでくるしね。外野の時よりも、500%緊張してましたよ」。ただ、極度の緊張が打撃好調の遠因になったのではないかと、坂口は考えているようだ。

「外野の時は守備のときでも打撃のことを考える余裕があった。でも、今はそんな余裕がない。考え過ぎずシンプルに打席に立ててるのかな」

 とはいえ元来、春先は好調なタイプではなく、どちらかといえばスロースターター。本人は「鬼のロケットスタートでしょ。何でやろね?」ととぼけながらも、昨季後半に兆しを感じていたことも事実だ。

「実はね、去年の夏くらいからかな。打撃を変えるということをしてないんですよ。オフから自主トレにかけてもそう。バッティングに関して何かを変えるということをしないままきてるんです」

 もちろん、向上心を失ったわけではなく、ある一定の「型」をつかんで今季に臨んでいる。

 ヤクルト移籍3年目、プロ16年目の今季は2011年の最多安打以来のタイトルを期待する声もあるが…。本人は「まだ開幕してから40試合そこそこ。100試合以上残っている。打率のことなんて意識するわけないですよ」と至って冷静だった。