G打線が再び大噴火だ。巨人は16日のヤクルト戦(鹿児島)で1イニング7点を叩き出すなど2度の打者一巡の猛攻を浴びせ、12―4と圧勝した。ノリノリのチームにあって気がかりなのは小林誠司捕手(28)だろう。この日は11打席ぶりとなる2点適時打を放ったものの、5月の月間打率は1割1分1厘と急ブレーキ。一時は首位打者に立つほどの快進撃を見せたが、結局は「春の珍事」だったのか…。

 打線が爆発したのは1―1の4回だった。この回先頭の阿部からの4連打で2点のリードを奪うと、その後も坂本勇、吉川尚の連続タイムリーなど打者10人の猛攻。一挙7点で試合を決定づけると、7回にも2度目の打者一巡で4得点。終わってみれば14安打の完勝劇で、由伸監督も「つながったね」とご満悦だった。

「打線は水物」と言われるように、日によって浮き沈みはあるが、チーム打率は依然としてリーグトップの2割7分7厘と好調だ。そんなビッグウエーブにイマイチ乗り切れていないのが小林だ。規定打席に到達した4月24日には打率3割7分5厘で、いきなりリーグトップに躍り出た。昨季まで打撃不振が続いた男の“大変身”には、村田ヘッド兼バッテリーコーチも「春の珍事が、夏の珍事までいってほしいよ」と口も滑らかだった。

 しかし、願いとは裏腹に最近の成績は下降線をたどり、特に今月は1割1分1厘(36打数4安打)とサッパリ。小林自身「魔法が解けました。誰かもう一度、僕に魔法をかけてください」とこぼしたこともあった。この日は9―1と大勢が決した7回に意地のタイムリーを放ったが、チームが大攻勢をかけた4回には送りバントをミスするなど精彩を欠いた。

 結局、この日は5打数1安打で打率は2割7分4厘となり、約3週間で打率が一気に1割下がった計算になる。目標とする2割5分は上回っているとはいえ、もともと首脳陣の打撃評価は高くなく「やっぱり…」の空気が漂いつつある。

 捕手陣では強打を売りとする新人の大城の素質が高く買われており、代打で登場したこの日は内野安打をマーク。打率は2割6分5厘でほぼ小林と変わらないが、すでにプロ初本塁打をマークするなどベンチの期待は数字以上のものがある。それだけに、小林がこのまま悪い流れをズルズルと引きずってしまうと…。

 試合後、無安打を免れて「ホッとしました」とバスに乗り込んだ小林。あの活躍を幻で終わらせないためにも、この日の一打を再浮上のきっかけにしたいところだが…。