巨人V奪回の鍵はブルペンにあり――。首位広島を3・5差で追う2位巨人だが、高橋由伸監督(43)の目下の悩みはリリーフ陣のやりくりだという。本紙評論家・前田幸長氏の直撃に対し、投手陣の厳しい台所事情を打ち明けた指揮官は、セットアッパーとしてフル回転する澤村拓一投手(30)の“操縦法”を前田氏に逆取材した。

 今季の巨人はとにかく打線の元気がいい。ただ、投手出身の私が気になっていたのはブルペン陣のフル回転。中日戦が行われていた東京ドームで由伸監督に話を聞くと、彼の悩みもやはりもそこにあった。「今の戦いの中で難しいのは、先発投手に6回は投げてもらわないといけないということなんですよ」と少々渋い顔で打ち明けてくれた。

 なかでも監督が特に気にかけていたのが、セットアッパーを任せる澤村の負担だ。今季の澤村は14試合でイニングまたぎがすでに4度。5月3日の広島戦で2回を投げ、翌4日のDeNA戦で1回。同9、10日の阪神戦でもそれぞれ2回、1回とイニングまたぎから連投している。

 セットアッパー経験者として、由伸監督から「現役の時はどうでしたか?」と聞かれたのは、肩の回復具合だった。現状では「澤村の2イニングは6連戦では2回までが限度」と決めているという。その上で「3連投で2イニング、1イニング、1イニングは可能ですか?
 1、1、1では? 1、1、2では?」と起用法を具体的に聞かれたが、自分は「1、1、2は無理」と答えた。

 苦しい終盤を澤村に頼らざるを得ない現状は理解できる。開幕当初は澤村に加え、上原、マシソン、カミネロの4人で終盤の3イニングを乗り切る構想だったはず。だが、まず上原の状態が万全ではない。由伸監督は同い年の右腕について「あいつ、風呂場で会ったらタメ口なんですよ」と笑いつつ「体は大丈夫ですが、年齢的に3連投とか、イニングまたぎはさせられない」と話した。

 マシソンの起用法を見る限り、昨季までほどの信頼を置ける状態にはないのだろう。カミネロを抑えに固定している以上、勝利を目指す上で澤村の出番が増えるのは現状仕方ない。ただブルペンにとって厳しい夏はこれからだ。昨季あれだけ盤石を誇ったソフトバンクのリリーフ陣も、サファテの故障離脱で7回以降の安定感がグラついている。澤村の負担を軽減するためには、宮国や中川、田原らの状態を見極め、いかに勝ちパターンに組み込んでいけるかが今後のポイントになる。

 それ以前に情けないのは早い回の降板が目立つ菅野以外の先発陣だ。今のように5、6回で降り続けられたらリリーフ陣はたまったものじゃない。6回で降板するにしても、一死と二死ではバトンを受ける投手の負担がまったく違う。終盤のアウト1つは実に重いのだ。 (本紙評論家)