「自分のストライクで誰かが救える」そう思ったらより頑張れる

2018年02月24日 16時30分

チャリティー活動をしているヘンドリックス(左、ロイター=USA TODAY Sports)
元局アナ 青池奈津子「メジャー通信」

 

【リアム・ヘンドリックス投手(アスレチックス)】オーストラリア人で、カナダ人の妻がいて、ドミニカ共和国に対してチャリティー活動をしているメジャーリーガーがいる。アスレチックスのリアム・ヘンドリックス。しかも彼はとてもおしゃべりだった。

「僕は5~10分じゃ何も伝えきれないくらい言葉数が多いんだ。父は静かなほうだし、家族の誰に似たのか分からない。両親が教師でそれなりに話す仕事しているから、2人分が僕に来たのかも? あまりにしゃべりすぎるからトレードによく出されているんじゃないかと思うくらいだよ」。まだ何も聞いていないのに話は快活に進んでいく。

「6歳の時に、クリケットと悩んで、仲良い友達がやっていたティーボールを始めたのが野球のきっかけ。もう名前も覚えていないんだけどね…」

 リアムの父ジェフさんはオーストラリアンフットボールの元プロ選手。リアムも一時はその道に進むことを考えていた。

「オーストラリアでは、米国人が野球をするようにフットボールをやるし、選手になる夢を抱くんだ。野球はそのオフシーズンにやるスポーツって思っていたんだけど、高校3年生の時に野球のU―18のナショナルチャンピオンシップがきっかけで、スカウトの目に留まり、18歳の誕生日の日にツインズと契約したんだ。2~3年野球やってみて、ダメだったり楽しくなかったりしたら戻ろう、そんなふうに思っていたよ。とはいえ実際は自分のプライドが高すぎて途中で辞めるなんてできなかったんだけどね」

 結局、メジャーデビューは渡米から5年後の2011年。「ツインズがよかったのは当時、オーストラリア人の選手が10人いたんだ。そのうち4人がメジャーに。ジャスティン・ヒューバーやルーク・ヒューズ。特にルークにはお世話になった。言語の悩みがなかったのがラッキーだけど、車は反対車線を走るし、運転席は反対だし、小さなカルチャーショックはたくさんあって、同じように新しい文化に慣れようとしている人たちが一緒にいて、気づいたことを共有できるだけでもありがたいよね。スプリングトレーニングでは毎年、オーストラリアの伝統料理を皆で食べに行って冗談を言い合いながら過ごしたし、朝食はいつも同じテーブルで食べていたよ」

 そのリアム、これまでにも多くのチャリティー活動を行っているが、昨シーズンからドミニカ共和国の貧困撲滅のために尽力するチャリティー団体に参加。彼の背番号31にちなんで自分がストライクを取るたびに3・1ドル寄付を募るキャンペーンで約4万6000ドルを集め、人格者で慈善活動を精力的に行っているメジャーリーグ選手に年に1人贈られる2017ロベルト・クレメンテ賞にもノミネートされた。

「活動が認められるのは光栄なこと。ドミニカと関係ない僕らが関わっているって面白いだろう? 僕自身を宣伝するつもりは全くないけど、僕が注目を浴びてることが活動や現状を多くの人に知ってもらえるポジティブな影響につながるから」

 きっかけは14年にウインターリーグのために訪れた美しいドミニカ共和国で、飲み水さえ不足している実態を目の当たりにしたことだったそう。

「飲み水を確保するために片道45分歩かなければならないなんて信じられないだろう。往復で1時間半、その間子供たちは野放しだ。コミュニティーのために何かしているとね、人々は僕を野球の数字や成績だけじゃないって見てくれるんだ。それから、ストライクを取るたびに誰かのためになってるって思ったら、いつもより頑張れるんだ」

 ストライクを取ったら誰かが救える、ってすごくかっこいいと思う。

 ☆リアム・ヘンドリックス 1989年2月10日生まれ。29歳。オーストラリア・西オーストラリア州出身。2007年にツインズと契約。11年9月6日のホワイトソックス戦でメジャーデビュー。ブルージェイズ時代の15年に先発から救援に転向。15年オフに移籍したアスレチックスでも中継ぎで活躍し、17年は70試合に登板して4勝2敗1セーブ、防御率4.22の成績を残した。185センチ、91キロ。右投げ右打ち。

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