ヤンキースの田中将大投手(28)の単独インタビュー、後編をお届けする。レギュラーシーズンではプロ人生初の2桁敗戦(12敗)を経験、一方、ポストシーズンではこれぞエースの投球。好不調の波が激しかった今シーズンの苦悩から、メジャー5年目の来季の目標まで。田中は一つひとつをひもときながら、その胸中を明かした。

 ――一番苦しんだ、5~6月上旬までの5連敗中、古巣・楽天ナイン、コーチも出演した励ましの動画が送られてきたそうだが、勇気づけられたのでは

 田中 勇気づけられた…それは日本的な考え方ですよ。もちろん、ありがたいし、そういうのをもらえてうれしいのは大前提ですが、「勇気づけられた」よりも「みんなに心配かけてしまっているな」という思いです。こんなことしてもらって申し訳ないなっていう…。

 ――当時の投球を見た楽天ナイン、関係者らは「技術面よりも、マウンド上で覇気がない。漫然と投げているように見える」と言っていた

 田中 そう見えてしょうがないと思います。実際そうだったと思うし…。ハッキリ言えるのは、そういうところに対しての考え方も、今は変わっているということ。試合に集中してないわけじゃなくても、なんで試合中にそういう感じになるかは自分自身に原因があるし、わかったので。

 ――迷いのなかにいたことの表れ

 田中 そうであってもゲームになれば関係ないこと。でも、その試合で投じる一球に、すべての思いをぶつけて、後悔のないように投げられたかっていうと…。そのときは(レギュラー)シーズン最後の方に比べると、そういう思いでは投げられてなかったと思います。だからそう見られたと思う。

 ――そんななかで迎えたのがダルビッシュと投げ合った、6月23日(日本時間24日)のレンジャーズ戦。高めフォーシーム、カーブが効果的だった。これも打開策の一つだった

 田中 カーブはゲーム別にやってたことですが、高めについてはそうですよ。近年、他のチームも使う比率は増えてたし、去年のシーズンとかも増えていた。でも高めのフォーシームを自分から進んで使っていくのは今までの野球人生ではなかった。今まで、そこ(高め)に対する必要性を感じたことがなかったから。でも、あの試合では(必要性が)ありましたね。

 ――後半戦は徐々に復調。結果的にポストシーズンでの快投につながった。7月には「今年はこれまでとはまったく違うアプローチをしている」とも語ったが

 田中 それが結局、今シーズン最後に結びついたんじゃないですか。(5月14日=同15日)に8失点KOされたヒューストン(アストロズ)戦の後辺りから、登板も登板間に関しても根本からしっかり見直さないと、と思って、ずっといろんなことに立ち向かっていって…。徐々に徐々に上っていって、9月、ポストシーズン、大事な時期で最高のパフォーマンスできるようにしようと思って取り組んできてたんで。結果的にはそういうふうになってよかったです。

 ――意識改革がレギュラーシーズン終盤でメンタルもメカニックも変えていった

 田中 でも、それはシーズン通してやらないといけないし、それが来シーズンの課題だと思う。この形を“続ける”とは言いませんけど、そういう意味ではスプリングトレーニングがすごい大事になる。ゲーム(オープン戦)で投げるときも、しっかり自分のテーマを持って。ただ相手を抑えるだけじゃなくて、しっかりと自分のテーマを持って投球していくことが、結局はシーズンにつながるのかなって、初めて今思っています。

 ――最後に個人的な目標ですが…

 田中 え、なんでシーズン終わったばかりで、そんなん言わなきゃいけないんですか!?

 ――去年はこの時期に言ってましたよ。「200イニングじゃ物足りない」と

 田中 言いましたっけ? ホントですか…では、2018年の目標は「頑張ります」(笑い)。

 ―― ……。でも、終盤でつかんだものをベースにして、成長できるかは一つの目標では

 田中 それは自分の取り組み方次第でいくらでも変わると思うし、今シーズンはそれをさらに実感した部分はあった。オフから取り組んで、スプリングトレーニング、来シーズンと、それを本物にできるかどうかじゃないですか。

 ――そうすれば数字も見えてくる

 田中 数字は見えてこないっすよ。結果として表れるもんだから。積み重ねだから。

 ――つまりは…

 田中 頑張ります(笑い)。