【ニューヨーク発】ヤンキースの田中将大投手(28)が、本紙の単独インタビューに応じた。日本人初の3年連続開幕投手に指名され始まったメジャー4年目だったが、好不調の激しさに悩まされ13勝12敗、防御率4・74。しかし、ポストシーズンでは圧倒的投球を披露し、存在感を見せつけた。まさに激動の一年だった今季を、右腕はどんな思いで過ごしてきたのか。そして気になる今後は…。2回にわたってお届けする。

 ――あらためて、この一年を振り返って

 田中:シーズン終わったときも言いましたけど、(投球内容に)アップダウンもあって、苦しいことがすごく多かったシーズンではありましたけども、後々ああいうことがあったから自分が成長できたんだって、広い目で見たときに言えるように。決して無駄にしないで、今後につなげていきたいですね。

 ――ワイルドカードからリーグ優勝決定シリーズに進んだ。試合を重ねるたびにチームが強くなり、成熟するさまを見てきた

 田中:う~ん、まだまだ成熟しているとは思わないです。でも今年、こういう形があったからこそ、来年が大事だと思いますよ。それが本物なのか、本物にできるかっていうのはね。チーム全体としてもまた真価が問われるときだと思うし。

 ――では、来年もヤンキースで投げると。オプトアウト(契約破棄)するかが注目されているが

 田中:いやいや、何言ってんの?(笑い)何、サラッと「東スポだから許されるでしょ」みたいな。答えられるわけないじゃないですか。ノーコメントです。

 ――最も苦しんだのは5月14日(同15日)、8失点したアストロズ戦からの(6月6日=同7日のレッドソックス戦までの)5連敗だが、実際「あれ?」となったのは、7失点でKOされた開幕戦からでは

 田中:いや、オープン戦は抑えていたけど(6試合登板で防御率0・38)、ずっと(メディアから)「良かったですね」と言われても「僕はそうは思いません」とずっと言ってきた。そこからです。

 ――それが開幕戦で出た

 田中:まあ、いろんな要素はありますよ。もちろん相手が僕を研究してきているところもあるし、プラス自分のこともある。

 ――変化球、特にスプリットも曲がりきったところを捉えられた印象

 田中:ボールの動きはやっぱり悪いですよ。序盤なんて特に良くなかった。(スプリットも)良くなかったですよ。落ちてもないし。(変化も)ツーシームとほとんど変わんなかったです。

 ――原因は。一時はプレートに足を置く位置を変えたりしたが

 田中:一番はメカニックです。フォームが全然変わりました。良くなるために変えましたよ。シーズンの中で。

 ――外的な要因は? ドジャースのダルビッシュも語っていたが「今年はボールが硬いし、さらに飛ぶようになった」と。影響はあったか

 田中:関係ないですし、それは今年に限った話じゃない。もう少し前から飛ぶなと思ってますよ。前の年だって、最後レイズ戦でホームラン4発打たれたときも「エライ飛ぶな」って思った。硬さに関しては、僕は別に気にならなかったです。

 ――投手にとっては小さいようで大きな変化ではないかと

 田中:今年は他チームもピッチャーの指先のケガが多かった。今まで、爪が割れたりマメができたりなんてなかったっていう人もいたことを考えると、そういうこと(硬さの影響)もあるんじゃないの?とは思いますけどね。

 ――最近メジャーでは、フライを打ち上げる意識が打撃を向上させるという理論が広まっている。「フライボール革命」とまで呼ばれ、実際に本塁打も増えた

 田中:ホームランだけじゃなく、ヒットになる確率も高いですからね。

 ――その辺の対応は。打者の、低めへの変化球の意識がより強くなったことが、被本塁打の多さ(自己ワースト35本)にもつながったのでは

 田中:そういう打ち方になったから、というのはあると思いますけど、もちろん僕の投球を研究されているのもある。その辺(低め)にくるボールが多かったら、そこに目付けしときゃいいわけだし。結局、変化球が多いと思っているなら、このカウントでこのボールが来る確率が何%だとか、データは出るわけだし。そういうのも全部重なって、だと思いますよ。プラス、僕の投げるボールが全然良くなかったわけだし。

 ――レギュラーシーズン最後の登板、メジャー自己最多15奪三振のブルージェイズ戦は見事だった。フォーシームの割合が増えたのが印象的だった

 田中:結局、一番速いボールを投げないと変化球が意味ない。効果が薄れるんですよ。もっと攻撃的に、アグレッシブに、自信をもってファストボールを投げていこうというところです。

 ――常々「自分のフォーシームは通用しない」と言っていたが、そこを見つめ直したのか

 田中:あの登板までは、フォーシームについてそこまで考えてなかったんです。でも今シーズンは相性悪かったですから(試合前まで4試合で15失点、被本塁打6)。じゃあ、なんでそれを打たれてたのか…いろいろ考えたら、やっぱり変化球が多かった。

 ――多いうえに、投手不利のカウントになれば余計真っすぐは投げづらい。結果、変化球をより狙い打たれる

 田中:僕のショボい真っすぐは余計打たれやすいですからね(苦笑い)。ならば浅いカウントで真っすぐと変化球、どっちだろう、って絞りにくいところで投げていけば、打たれる確率は減る。だったらもうアグレッシブに、早い段階からどんどん真っすぐ使っていこうと。結局、その後変化球も生きてきた。みんなブンブン振ってたじゃないですか。それまではボールが良くても振ってこなかったですからね。

 ――ポストシーズンの快投も、フォーシームでも勝負ができたから

 田中:ヒューストン(アストロズ)は相手の監督も言ってましたよね「配球を変えてきていた」と。そこですよ。配球が今までの傾向と違うでしょ。真っすぐが来ると思ってないもん。早い段階での真っすぐもそうだし、追い込んでからの真っすぐもそう。

(明日へ続く)

【WS終了後3日以内に決断】オプトアウト(OptOut)「Opt」は決めるの意味で、自ら進んで契約を放棄すること。選手は長期契約を望む一方で、契約の際に年俸が固定されるデメリットもある。活躍次第では翌年の大幅な年俸アップが見込めるため、オプトアウト条項を盛り込むことで契約途中でより好条件で新しい契約を結び直したり、FAとなり他球団と交渉することができる。行使するか否かの表明期限はワールドシリーズ終了から3日以内。