元局アナ 青池奈津子「メジャー通信」

【フェルナンド・ロドニー投手(ダイヤモンドバックス)】野球帽を斜めにかぶり、投げ終わって勝利した後には空に向かって矢を射るようなポーズを決める。それがダイヤモンドバックスの守護神、フェルナンド・ロドニーのトレードマークだ。

 ドミニカ共和国代表として出場した2013年のWBCでは、カリブ海の島々で主に食されている調理用バナナのプランテイン(通常のバナナより大きめ)をポケットから出すシーンが同国代表の象徴にもなった。今年のWBCでも黄金の特大プランテインレプリカを選手紹介の時に掲げて見せるなど、実にちゃめっ気たっぷりなベテランだ。強いドミニカなまりの英語の声が思いのほか低くおっとりしていて、なんとも言えないギャップを感じさせてくれる。

 40歳になっても野球を続けるロドニーは「まずは神様に感謝。それから父。夢の生活をさせてもらっていること。野球ができること。いい人生だよ。自分のやっていることすべてに幸せを感じる」と優しい口調で話す。そして「オフはね、時間があればできるだけドミニカの子供たちにあいさつしに行くんだ」。地元のサマナには野球を教えたり、ユニホームやおもちゃを持って訪れたりするそうだ。

「そこには小さなコミュニティーがあって、自分たちのことを『ラ・フレチャ(スペイン語で“矢”の意味)』と呼んでいる」ところから、ロドニーの矢を射るようなフィニッシュポーズが生まれた。彼は今その地元で、私財を投じてあるプロジェクトにいそしんでいる。

「生まれ故郷でね…。実はスタジアムを建設中なんだ。2014年に土地を買って、書類手続きをようやく済ませて半年ほど前から工事を開始。僕が幼かったころ、ちゃんとした球場でプレーする機会は一度もなかった。だから、子供たちのためにスタジアムを造らせてほしいってお願いしたんだ。もしかしたら未来に、そこからいい選手が生まれるかもしれないだろう?」

 完成日を聞くと「分からないんだ」と屈託のない笑顔で言えるのが、なんとも南国ドミニカらしい。完成までには数年かかるというロドニー肝いりのスタジアムには、父の名から「ウリセ・ロドニー・スタジアム」と名付けることを決めている。

 ウリセさんは02年、ロドニーがメジャーデビューする6日前に、がんでこの世を去った。仕事中に日差しを避けるために帽子を斜めがけにしていた父をしのんで、ロドニーはずっと帽子を斜めにかぶっている。何事もやるなら「楽しんで」と教えてくれたウリセさんを思い出し、心が弾むという。

「あと1年かな。あと1年野球をさせてもらって、300セーブ(現地時間9月22日達成)と新しい球場ができたら結構いい感じだと思うんだよね」

 地区シリーズでダイヤモンドバックスはドジャースに初戦から敵地2連敗。第3戦は本拠地チェイス・フィールドに舞台を移して9日(日本時間10日)に行われた。そんなロドニーの姿にも注目してもらいたい。

 フェルナンド・ロドニー 1977年3月18日生まれ。40歳。ドミニカ共和国サマナ州サマナ出身。180センチ、99キロ。右投げ右打ち。97年11月にアマチュアFA選手としてタイガースと契約。2002年5月4日のツインズ戦でメジャーデビューし、09年に37セーブをマーク。エンゼルスを経て移籍したレイズでは1年目の12年に自己最多の48セーブを記録し、最優秀救援投手賞とカムバック賞に輝く。マリナーズに移籍した14年も48セーブで最多セーブの初タイトルを獲得。球宴には過去3回、WBCにもドミニカ共和国代表として3回出場している。