永久欠番に加わった背番号2 ジーターに教わった超一流の言葉

2017年04月30日 11時00分

ヤンキース一筋でプレーしたジーター
足で稼いで20年 外国人選手こぼれ話 広瀬真徳

 

 昨年末、メジャーからうれしいニュースが舞い込んできた。元ヤンキースのデレク・ジーターが現役時につけていた背番号「2」がチームの永久欠番になることが決定した。

 

 ヤンキースは言わずと知れた名門チーム。今も「野球の神様」とあがめられるベーブ・ルース(背番号3)を筆頭に偉大な選手が数多く所属していた。このため、チームの1桁番号で永久欠番になっていなかったのは「2」だけだった。その番号がとうとうジーターによって埋められたのである。

 

 残した功績からすれば偉業は当然だろう。

 

 2014年に現役引退するまでの20年間、ヤンキース一筋でプレー。2747試合の出場で、メジャー歴代6位の3465安打を記録した。もっとも、記録だけでなく、彼の魅力は人間性。野球に取り組む姿勢を始め、周囲への言動や振る舞いはプロ野球選手としてのお手本だった。記者も彼に何度も取材したが、どんな時でも立ち止まり懇切丁寧に対応してくれた記憶しか残っていない。だからこそ、彼は女性にもモテモテ。現役時代は「ニューヨークの貴公子」として名高い有名女優や歌手、モデルらと数々の浮名を流したのもうなずける。

 

 そんなジーターへの憧れもあり私は一度、春季キャンプ中に本人に聞いたことがある。「なぜ、多忙なプロ生活を送りながらもプライベートを満喫できるのか」と。

 

 メジャーの年間試合数は162試合。日本の試合数より過密なうえ、シーズン中は国土の広い北米大陸をチャーター機で頻繁に移動する。普通なら、肉体的にも精神的にも充実した休日を送ることは難しい。この疑問を解決したかったからだ。ジーターは野球とは無関係な質問にも、真面目な顔でこう語ってくれた。「シンプルなことだよ。気持ちのオンとオフをしっかりと区別するんだ。野球をやる時は野球に集中し、休みの日は野球を忘れ、自分のやりたいことに没頭する。それができれば、タフなシーズンも乗り切れるよ」

 

 言葉で言うのは簡単である。実際に仕事とプライベートの切り替えを明確にできる人は少ない。私は「オン、オフの区別をすること自体が難しいのでは?」と食い下がったところ、彼は笑みを浮かべながらこう続けた。「それなら、終わったことは全て忘れることだ。こちらのほうがよりシンプルだ。野球の場合、いいプレーができる日もあればできない日もある。日々、ベストを尽くすことは大切だが、結果は自分ではどうしようもできないことのほうが多い。時間は戻ってこないしね。だから、過去を引きずらない。それが大事だ。キミもそういう思考を持っていけば、素晴らしい人生を送れるはずだよ」

 

 心にグサッときたことを今も鮮明に覚えている。

 

 思えば何か失敗するたびに「やってしまった…」と後悔ばかり。その気持ちを引きずり、さらなるミスを犯す負の連鎖を続けたこともあった。ジーターはそんな記者の「マイナス思考」をプラスに変えてくれたのである。

 

 そんな好人物だからこそ、今後は指導者として活躍してほしいが、現時点で本人にその気持ちがないんだとか。

 

“芯”強いジーターらしい選択とはいえ、個人的にはピンストライプで指導する姿を見てみたい。

 

 ☆ひろせ・まさのり 1973年愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心に、ゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。