【メリーランド州ボルティモア発】ヤンキースの田中将大投手(28)が自己最速158キロ更新から一夜明けた9日(日本時間10日)、胸中を明かした。前日、敵地オリオールズ戦に先発し、自己ワーストの6四死球を出しながらも5回3失点。勝ち投手の権利を持ったまま降板したが、救援陣がリードを守れずチームは逆転負け。今季初勝利を逃した。

 この日は登板翌日ということもありノースロー調整。グラウンド上ではストレッチのみで終えた。前日の登板では自己最速を計測したばかりか、楽天時代にたたき出した最速147キロの“鬼スプリット”まで披露した。となると、どうしても古傷の右ヒジの状態が気になるが「大丈夫ですよ。…まあ、もしダメでも『大丈夫』って言いますけどね」とニヤリ。打撃練習中に球拾いで再び姿を見せると、イチローばりの背面キャッチを試みるなど、終始リラックスした様子だった。まったく問題なさそうだ。

 前日はオリオールズの強力打線相手に3回まで無失点。しかし、2点リードの4回に先頭打者を四球で歩かせると二死後に適時打を許し、1失点。5回になるとスライダー、スプリットが思うように操れず3四死球が絡んで2失点し、なおも一死満塁となった。開幕戦のような大量失点は避けたい田中は、ギアを上げただけでなく「細かいコントロールというより“リミッター”を外して」全力で抑えにかかった。

 フォーシームの球速は投げるほどに上がり、7番・金賢洙の3球目に楽天時代の自己最速を2キロ上回る158キロ。その後も150キロ台中盤を連発し1点のリードを守ったが、この回だけで36球。計92球で降板となった右腕は「先発ピッチャーという役割で5イニングしか投げられてない。先発としての責任は今日のゲームはすごく大きいかなと思う」と反省しきり。

 この日、オリオールズ戦についてあらためて問われた田中は「自分でも(158キロが)出るとは思わなかった。でもあそこまでは(リミッターを外した経験は)初めてかもしれない。それに、あれをずっとやってたら、体のどこかがブッ飛びますよ」と振り返った。

 リミッターを外したことには「『外さざるを得なかった』という表現が一番合っているかもしれませんね」とポツリ。それほどのピンチだった。

 最後は「30歳を前にして、僕もまだ“伸びしろ”があるんですかねぇ」と再びニヤリ。自虐ネタでしっかり“オチ”をつけた。次回登板は中4日で13日(同14日)、ホームでのレイズ戦。開幕のリベンジを果たす。