【フロリダ州タンパ9日(日本時間10日)発】ヤンキースの田中将大投手(28)が、悩める“弟分”に熱血講義だ。練習中、若手右腕のセベリーノが深刻な表情で田中のもとに近寄ると、グラウンドの中央で身ぶり手ぶりの立ち話が始まった。時間にして20分ほど。気がつけばグラウンドに選手の姿はゼロ、周囲が気にならないほどヒートアップしていた。

 実はセベリーノ、前日行われたWBCカナダ代表との練習試合に先発したが、直球の制球が定まらず2回を1被弾を含む4安打、2失点と不調だった。試合後、捕手のサンチェスが「チェンジアップは良かった」とフォローしたが、先発ローテーションの一角として期待していたジラルディ監督は「チェンジアップも重要だが、直球の制球もまた本当に、本当に重要なものだ」とバッサリ。本人も肩を落としていた。

 田中もそんな右腕の姿を見過ごせなかった。まだ23歳と若く、ロッカーも近いとあってエースを慕ってくれている。「おはようございます」など日本語で呼びかけられてはジョークを飛ばしあう、言ってみれば“弟分”のような存在だけに、真剣に向き合った。

 いつもは陽気なドミニカンの神妙な面持ちに、田中も「あんな真剣に彼と話すのは初めてですよ…」と少し驚いた様子。言葉の壁もあり、なかなか気持ちがダイレクトに伝わらないもどかしさを感じつつも「ピッチング(について)もそうですけど、自分をコントロールするには、とか…そういうの(セルフコントロール)も一つの技術論だと思うので」。悩める若手に、エースとしてできる限りのアドバイスを送ったことを明かした。

 11日(同12日)にはオープン戦3度目の登板が控えている田中。言葉だけでなく、パフォーマンスでも手本を見せる。