「オークリー」のサングラスを流行させた男

2017年01月28日 16時30分

オークリーのサングラスはイチローも愛用している(ロイター)
 元局アナ 青池奈津子「メジャーオフ通信」

 

 メジャーリーグのクラブハウス前の通路に、わらわらと人だかりができていることがある。また、あの人が来ている。スポーツサングラスのブランド「オークリー」のスポーツマーケティング担当ゲリー・ゲントさんだ。

 

 彼が広げる大きな黒のスーツケースの中には、レンズ、ノーズグリップ、耳にかかるアーム部分のパーツなどが何種類も入っている。友人に誘われて15年前にこの仕事を始めたという彼は、今では一人で全30球団を担当。「ハーイ、ゲリー」とひっきりなしにやってくるメジャーリーガーたちの要望に応えて、古いレンズやアームなどを取り換えている。

 

「うちの製品を使ってくれている選手は全面サポート。サングラスは毎日使うものだから、消耗しちゃうでしょ? だから古いものを持ってきてくれたら、新しいものとトレード。こうすれば選手たちにはフレッシュなものを、テレビの視聴者たちには最新モデルを提供できるでしょ?」

 

 縁とは実に不思議なもので、いつも見かけるゲリーさんにようやく話しかけたこの日はダイヤモンドバックスのクラブハウス前。そこにコーチのフィル・ネビンさんが通りかかった。

 

「知っているかい? オークリーは南カリフォルニアのフラトン大学の野球チームがかけたのが始まりなんだよ」

 

 1975年、南カリフォルニアでモトクロスのグリップメーカーとして始まったオークリーはその後、様々な開発を展開し、アイウエア業界に参入。汗をかいてもメガネがずり落ちない特殊な素材が売りで、太陽の下で練習する野球選手らにも使ってもらおうと試しに地元の大学チームに配給したのが92年のことだった。

 

「最初はフィールドで守備の時だけつけていたんだけど、打撃練習で着用したら打率が上がった選手が続出したんだ。それまでは野球でサングラスをかけようなんて誰も考えもしなかった」

 

 サングラス効果があったのか。この年、フラトン大はカレッジ・ベースボール・シリーズ(大学の全米1位を決める大会)に進出。全米のテレビ中継では連日、この野球チームの大学生らがサングラスをかけてプレーする姿が映し出され、物議を呼んだ。

 

「最初は皆、大学生がかっこつけてやっていると思ったみたいだね。スポーツ・イラストレイテッドの記事で(当時オリオールズの)マイク・ムシーナが『あのかっこつけたガキは誰だ』なんて言っていたよ」

 

 最終的にフラトン大は準優勝し、その年のドラフト1位指名も同大から選出されることとなる。そしてその翌年から、メジャーではオークリーのサングラスをかける選手が増え、今ではほぼ独占市場と言えるまでになった、というわけなのだ。

 

「僕もキャリアの間は着用しない日は一度もなかったよ」

 

 そう言ってゲリーにレンズを新しくしてもらったサングラスを手に持ちフィールドへ向かったネビン・コーチ。その後ろ姿を見ながらゲリーが教えてくれた。

 

「彼のことだよ。92年、全米ドラフト1位指名。フィル・ネビンこそがオークリーのトレンドセッター(流行発信者)だったんだ」

 

【オークリー】1975年、米カリフォルニア州でモトクロス・BMXのハンドグリップメーカーとして創設。80年代に入ってアイウエア業界に参入を図り、機能性とデザイン性を融合させたスポーツサングラスを次々と発表して世界的に成功を収める。多くのスポーツアスリートが同社のサングラスを愛用。イチロー(マーリンズ)も同社のサングラスを好んで使用している。

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