捕手から投手転身のハッチャー オフには地元で公園管理のパート

2016年12月25日 16時30分

 元局アナ 青池奈津子「メジャーオフ通信」

 

【クリス・ハッチャー投手(ドジャーズ)】今回紹介するのは毎年、ある町でクリスマスの時期には欠かせない野球選手の話。ドジャースのクリス・ハッチャーは2010年のメジャーデビュー当時は捕手だったが、翌年から投手になったという異例の選手(メジャーで捕手から投手へ転向した選手は1930年代後半にプレーしたアート・ドール以来)だ。

 

 さらに異例なのはオフシーズンに地元ノースカロライナ州キンストンで市が運営する公園等の管理団体、パークス・アンド・レクリエーションでパートタイムの仕事をしていること。15歳のころから働いている。

 

「学生のアルバイトから始まったんだ。当時は夏に球場のグラウンド整備などをしていて、体を動かせるから良いトレーニングになっていたんだけど、プロ入りしてからはオフだけ働いている。もう僕の一部だね。楽しいし、少しでも地域への恩返しになればと思って。これがなかったら僕は毎日テレビを見て過ごすだけの役立たずになっていただろうからね。一応ちゃんとオフィスにデスクがあるんだよ」

 

 フレックスタイム制で週に30時間ほど。朝7時に出勤して、午後からは野球のトレーニングへ。市の決まりで最低賃金をもらっているが「ボランティアでも構わない」と生き生きした表情で話す。「二十数個の公園を管理しているんだけど、毎年新しいプロジェクトをしているうちに大工やら溶接が得意になって、去年は好きが高じて自宅に溶接工房までつくっちゃった。工房にこもって音楽をかけて作業をしたら6~7時間は平気で没頭できる」。市のプロジェクトで、これまでに3メートル級の飛行機のオブジェやキッズ向けの機関車の制作等に携わってきたと誇らしげだ。

 

 そして毎年11月の感謝祭の後に欠かせないのが、市のクリスマスツリーのセットアップ。「人工のもみの木なんだけど、8メートル以上あるから重機を使って2日かけて設置するんだ。重機の運転をできるのが全部で3人しかいなくて、7~8年前から僕が担当するようになった。5万個のライトをつけているからこれも大変! 球が切れると連動して切れちゃうから、どの球が切れたか、一つひとつ確認しなきゃならない」

 

 美しくライトアップされたツリーの写真を見せてくれたクリスから実に温かい気持ちをもらった。

 

 そのクリスは今年、いつもと違うオフを過ごしている。10月上旬、カリブ海で発生し米東海岸南部にも大きな爪痕を残した「ハリケーン・マシュー」。クリスの地元すぐ近くのレノア郡も大きな被害に遭った。シーズン終了後にすぐさま航空券を取った彼は、連日ハリケーンの残骸を処理するゴミ廃棄場へ通い、他の作業員たちと同じ蛍光色のベストをまといながら、ブルドーザーを操作して復旧を手伝っている。地元メディアの取材にこう答えていた。

 

「僕は野球選手としてより、何事にも頑張っていたヤツって覚えてもらいたいんだ」

 

 どうか皆様にもすてきなクリスマスを――。

 

 ☆クリス・ハッチャー 1985年1月12日生まれ。31歳。ノースカロライナ州レノア郡キンストン出身。右投げ両打ち。184・5センチ、93キロ。2006年のドラフトで指名されたマーリンズに入団。10年9月19日のカブス戦で代打としてメジャーデビュー。傘下2A時代の11年に捕手から投手へ転向。同年7月16日のカブス戦でメジャー初登板。14年にはセットアッパーとして定着し、52試合に登板して防御率3・38。15年からトレードで移籍したドジャースでプレーし、今季は37試合に登板して5勝4敗、防御率5・53。好不調の波があるもののチームのブルペンを支え続け、地区優勝に貢献した。

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