【イリノイ州シカゴ14日(日本時間15日)発】レッドソックスからFAになっていた上原浩治投手(41)がカブスと1年600万ドル(約7億円)で合意した。メジャー4球団目、ナ・リーグ球団所属は初だ。ベテラン右腕はカブスを選んだ理由、新天地で迎える米国9年目への思い、ラブコールが送られている来年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)について熱く語った。

 12日(同13日)に米国入りした上原はシカゴ市内の病院で契約の最終過程で必要なフィジカル(身体検査)を2日間にわたって受けた。2泊4日の“弾丸ツアー”だったが、全面改修工事中の新本拠地となるリグリー・フィールドを訪れ、ロッカールームやトレーナールームなどを見学。13日(同14日)夜にはカブスのエプスタイン球団社長、代理人のマーク・ピーパー氏らと会食し、充実した時間を過ごした。

 気温マイナス12度と極寒のシカゴ市内で取材に応じた上原は「まだサインはしていませんし、僕からも球団からも発表はしていません。ボストン(レッドソックス)の2回目の(契約の)時もそうやったけど、サインするのはキャンプに入ってからかな? 僕もよう分からん」と明かした。

 来季開幕前に42歳になる上原に年齢の壁もささやかれたが「年齢を言われるのがね、年齢で金額的なものが抑えられるので。土俵に立てば年齢は関係ない。結果を出したヤツがすごいわけですから」と自信を見せる。ピーパー氏について「彼の力のおかげでここまで来られたわけですから、すごく感謝しています」。

 レッドソックスの球団社長で編成本部長のドンブロウスキー氏はウインターミーティング中に「いいオファーを出した」と胸を張っていた。残留はなぜ消えたのか。上原は「他球団の話を聞いてみたかったので」と説明するが、提示額が低かったのは明らか。ところが待ちきれない性格の同氏は翌日、ブルワーズからトレードでソーンバーグを獲得したことを発表。その直後、カブスからの条件提示を受け、一気に交渉が進んだ。

 上原は「条件面に関して言えば、確かに(カブスよりも)もっといいところはあった」。それでもカブスを選んだのは2つの理由がある。

「コージが欲しいというビデオレターをもらったんです。そこは結構、僕の中では決め手のひとつになりましたね。(エプスタイン)球団社長(のスピーチ)と、今年のワールドシリーズで優勝したシーンの中で、名前をコージにいじって、最後のマウンドにはコージがいる、と作ってくれた」

 レッドソックスのGM時代からセイバーメトリクスを駆使したスカウティングで、自身3度のワールドシリーズ制覇を成し遂げたエプスタイン球団社長の頭にあるのは1998~2000年のヤンキース以来となるワールドシリーズ連覇。上原はチャプマンが抜けたブルペン陣を再構築するにあたり、ロイヤルズから獲得したウェード・デービスとともに必要不可欠なピースだったのだ。

 上原は「そういう気持ちがうれしかった。自分を必要として獲ってくれたわけですから、その期待に応えたい」と語った。もうひとつの理由は指揮官だ。

「マドン監督の下で一回やってみたいというのは、彼がタンパ(レイズ)の監督をしている時から思っていたのでね」

 思い切った内野手のシフトを敷くことでも知られるマドン監督だが、上原は印象に残っている投手起用があるという。

「2013年のプレーオフ(レッドソックスとの地区シリーズ第3戦)でひとり1イニングずつ投げさせたこと。そういう面白い采配をする監督でもありますし、自分では気づいていない何かを引き出してくれるかもしれないので、楽しみにしています。それに、自分が将来、もし指導者になることがあれば、下(の選手たち)に伝えられることがあるかもしれない」

 今年のプレーオフでも、マドン監督は常に先手を打つ投手起用で勝ち進み、カブスに108年ぶりの世界一をもたらした。キャリアの晩年に差し掛かっている上原が、名将のもとで完全燃焼しようとしているのは想像に難くない。

 その上原はWBCでの世界一奪回を目指す侍ジャパンからも必要とされている。上原は「これから球団と話し合います。キチンと、お互いが話し合って納得できるような答えを出したい」と話すにとどめた。出場意欲については「常々言っていますからね。どうなるか分からないが、決まればちゃんと発表します。ブログかなんかで」と前向きだ。

 大学生時代を含め国際大会では25試合で12勝無敗2セーブの上原。侍ジャパンに貢献したい気持ちは強い。「白黒ハッキリしたことをやるだけ」と、結論を先延ばしにするつもりはない。「参加するって決まればイメージする」とも。17年、上原は2つの世界一を狙う。