【独占インタビュー前編】ヤンキース・田中将大投手(28)が本紙の単独インタビューに応じ、充実の2016年を振り返った。メジャー3年目の今季は、2年連続開幕投手を務めるなどエースとして活躍。初めて規定投球回に到達し、14勝4敗、リーグ3位となる防御率3・07の好成績を残した。「(チームの中心であることを)バリバリ意識して」臨んだこの一年。田中は何を考えていたのか。2回にわたってお送りする。
――好成績を収めたが、その陰ではさまざまな試行錯誤があった。悩み苦しんだ一年にも思えたが
田中:今年がそんな特別だとは思わないです。毎年、毎年いろいろ考えながらというか、悩みももちろんありますしね。今年だけという感じではないですね。
――昨年は24試合で被本塁打が25(今季は31試合で22本)ということもあり「投球時にボールに角度をつけるフォーム」を模索するキャンプだった。あらためてフォーム改造のキッカケは
田中:あからさまに日本の時に比べたら角度がなくなっていたんで。ヒジの角度も下がっていたし。それに投げ下ろしていないからスプリットの変化も微妙だし、というところですかね。
――しかし、オープン戦では結果が出ず、3月23日(日本時間24日)のナショナルズ戦では4回7失点。最終登板となった29日(同30日)のフィリーズ戦では4回1失点と、なんとか間に合わせた。新フォームをいったん「棚上げ」したように感じたが
田中:自分の数ある投球フォームの中の一つを引っ張り出して投げてたということ。新しいフォームではなかったですよ。でも最初の1試合だけですけどね。その後はいろいろ変えていきましたよ。
――開幕後も試行錯誤が続いた。5月9日のブルペンで初めて足をプレートの三塁側から一塁側に移した。当時は「おいおい話します」と言っていたが、その真意は。ちなみに一塁側からだとツーシームが生きると言われているが
田中:そうですよ、その通りですよ。結局、右バッターのインサイド、左バッターのアウトサイドにツーシームを投げるとき、三塁側から投げると一回こっち(真ん中付近)に入れないといけないんですよ。
――三塁側から投げると、ボールをリリースするときの右手の位置はさらにプレートから離れている。だからシュート系(ツーシーム)を投げるときは、いったんストライクゾーンに投げてから動かさないと効果が出ない
田中:だから甘くなったときに、どうしてもすんごく甘くなってしまう。だからピンポイントで投げれないとダメだし、(リリース直後は)ボール球から入っているから全部(真ん中付近に)入ってきて打ちやすいんですよね。だったらプレートのある方(一塁側に足を置き、投球時の右手の位置がプレート上にある)から、角度ついて投げたほうが立体的に効果はでかいと思うんですよね。スライダーは絶対、三塁側の方がいいんですけどね。角度がつくから。
――中盤までは試合を作りながらも、なかなか勝ち星に結びつかなかった。そんな状況に当時は「自分自身を褒めないと。戒めてばかりではやっていけない」とも語っていた。自分に厳しいイメージがあるだけに意外だった
田中:まず、日本と同じようにいくわけがないですよ、レベルが上がっているんですから。日本の時に求めていた感じで、全部を全部そういうふうに(自分に厳しく)やっていくと、こっちのほうがローテーションもきついし相手もきついわけだから、切羽詰まった状態でずっとやらなくちゃいけなくなる。だから妥協できるところをちょっと見つけてあげて、自分のハードルを少し下げることで楽になってくる部分がある。そういう意味です。
――「しょうがない」という気持ち
田中:僕の「しょうがない精神」は結構前から持ってますよ。しょうがない、で納得するみたいな。自分でどうすることも、コントロールすることもできないことに対していつまでも考えてたってしょうがないわけだし、それを「しょうがない」のひと言で切り替えられるってすごい楽でしょ。んじゃ、自分の全然本意じゃないところから上司にバーンって怒られて、それをいつまでも「うーん」って思ってもしょうがないでしょ。「ま、しょうがねっか」で。楽でしょ。
――当時は登板間隔も取りざたされた。中4日と中5日で成績が違うことで、地元メディアから質問攻めされていた。そのときの心境は
田中:これはシーズン終了時にも言いましたけど、一番本当に思っていたのは「今だけで言うなよ」というか。結果で言われるところだから、しょうがないんですけど「今に見とけよ」っていう気持ちは強かったかもしれないですよね。今年始まるまでは、中4日の方が多少ですが成績も良かったわけだし。だから、自分のやっていることを信じてやっていけば、とは思ってましたけど。
――原因は把握していたのか
田中:原因がはっきりわかっていたわけじゃないですよ。でもまあ、本当に毎日、毎日、どうしたらいいかを考えながら、修正、修正、調整とやっていって、たどり着いた部分ではあると思いますけどね。=続く=
ヤンキース・田中 試行錯誤の「新フォーム」と苦境を支えた「しょうがない精神」
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