大下剛史氏「黒田は引き際もメジャーで学んできたな」

2016年10月19日 16時25分

黒田(左)と話す大下氏

【大下剛史「熱血球論」】実にかっこいい。かっこ良すぎる。過去に日本球界で日本シリーズ出場を目前にしたエースが引退発表したことがあっただろうか。黒田は7年にわたるメジャー生活で技術だけではなく「引き際」も学んできたのだろう。今年で言うならレッドソックスのオルティス、2014年限りでユニホームを脱いだヤンキース時代の僚友ジーターもしかり。米国で一流選手たちの引き際を目の当たりにしてきた黒田は、このタイミングを狙っていたようにさえ思う。

 引退すること自体に驚きはなかった。そもそも食事をした際に、黒田には「いつまでも家族と離れ離れは良くない。子供たちも悲しい思いをしている。今年、カープを優勝させて、燃え尽きてロスに帰れ」という話をしたぐらいだ。そんな理想的なシナリオを黒田はすべて実現した。本当に、たいした男だと思う。

 復帰から2年、チームにとって黒田の存在感は大きかった。若い選手が多い中で“重し”の役目も担っていた。鈴木誠也などは黒田に一喝されてからプレー中にガムをかむことをやめたとも聞いている。そんな後輩たちのことを思えば、まだまだ心配な点があるかもしれない。しかし、カープには新井がいる。だからこそ、安心してユニホームを脱げたという面もあるだろう。

 黒田に残された最後のシナリオは、初出場となる日本シリーズで32年ぶりの日本一に貢献し、ファンに惜しまれながらグラウンドを去ることだ。偉大な先輩の引退発表で若い選手たちも燃えているはず。ともにカープのユニホームを着た仲間として、もう一度、黒田が歓喜の涙を流しながら胴上げされているシーンを見てみたい(本紙専属評論家)