「第27回U―18ベースボールワールドカップ」第4日は8月31日、大阪市の舞洲ベースボールスタジアムなどで行われ、1次リーグA組の日本はチェコに15―0と7回コールド勝ち。開幕4連勝とし、1位で各組上位3チームによる2次リーグ進出を決めた。注目の“怪物1年生”清宮幸太郎内野手(早実)は左ヒザに違和感を訴えて2打数無安打で途中交代し、打線爆発の中で無念の“カヤの外”。4試合でわずか2安打と波に乗り切れていない清宮にネット裏のメジャースカウトから投手再転向の荒療治発言まで飛び出した。

 清宮に思わぬアクシデントが発生した。この日、試合前の練習中に左ヒザに違和感を覚えた。4番・一塁で先発出場して今大会初めて守備についたが、第1打席は二ゴロ、第2打席も右飛に倒れ、3回の守備からはベンチに退いた。西谷監督は「大事を取って交代させた」と説明した。

 試合後の清宮は「打つのは大丈夫だけど、走るのが変な感じ。球場に来るまで全然問題なかったんですけど…。明日? わからない」と冴えない表情。夏の西東京大会から準決勝に進んだ甲子園大会、さらに8月20日に帰京すると同21日に新チームで始動。翌22日には高校日本代表に合流と休む間もなくフル回転しており、疲労は蓄積しているだろう。常に全力プレーしているだけに何らかのタイミングで痛めていた可能性もある。

 現時点では違和感を覚えたということで深刻な症状ではなさそうだが、西武や巨人で活躍した清原和博氏、巨人、ヤンキースで主砲を務めた松井秀喜氏も現役時代にヒザを痛めて苦しんでいるだけに気になるところだ。影響が出ないことを祈るばかりだ。

 心配なのはヒザだけではない。期待の打撃もここまで12打数2安打、打率1割6分7厘、0本塁打、2打点と不発だ。清宮は「迷惑しかかけていない。これじゃ3年生のみなさんに示しがつかない(顔向けできない)。1年生で使ってもらっている意味、役割を果たせていない。そろそろ結果を出して貢献したい」と唇をかむ。それでもチームの2次リーグ進出が決まったことで「今までより厳しくなる。らしい打撃ができればいい」と決意を新たにした。

 今大会も甲子園大会に続いて多くのメジャースカウトが視察に訪れ、清宮の打撃もチェックしている。どう見ているのか。

 あるスカウトは「まだまだひよっこですよ。オコエ(関東第一)みたいに肉体改造して走力、守備力をつけないと対象になってこないよ」とバッサリだ。怪物とは呼ばれるがまだ、1年生。足りない部分は本人も分かっているだろう。

 そんな清宮に別のスカウトは仰天提案だ。「彼は以前に投手をやっていたでしょう。もう1回戻ったらどうか。彼は守備で変わった投げ方をするね。本格的に投手をやれば、あの投げ方が武器になるかもしれない」。中学時代の調布シニアでは一塁に専念したが、それ以前の東京北砂リトル時代はエースで4番としてリトルリーグ世界選手権に出場。米・テネシーとの世界一を決めるワールドシリーズに先発し、4回を1安打1失点、8三振の好投で勝利投手になっている。当時のMAXは129キロで、94メートルの超特大弾とともに“和製ベーブ・ルース”と米国で大注目された。その投手に再転向すれば、さらに輝くというわけだ。

 もっとも、メジャーのスカウトが非凡な打撃センスと184センチ、97キロの巨体から繰り出すパワーで甲子園の注目を一身に浴びた清宮の投手再転向を本気で言っているとはにわかに信じがたい。打席で再び光を放つための荒療治といえそうだ。