元局アナ 青池奈津子「メジャー通信」

【ジェーソン・ブルジョワ外野手(レッズ)】つい先日のドジャー・スタジアム。ビジタークラブハウスでハンガーの縁を使ってバットの松やにを取ろうと試みていたのが、レッズのジェーソン・ブルジョワだ。「それ、取れるの?」と話しかけてみた。「いや、まったく」。笑顔を見せたものの、やはりまったく効果がないようだった。「本当はちゃんと専用の道具があるんだけどね」。意固地になって取りに行かないところが、おちゃめに見えた。

 そんなジェーソンは、テキサス州ヒューストン出身。ドジャースのカール・クロフォードとブレーブスのマイケル・ボーンとリトルリーグ時代ずっと同じチームでプレーした経歴を持つ。

「3人が30代になってもまだメジャーリーグにいられるって、なんか幸せだよね」と笑っていたが、その3人を相手にしなければならなかった小学生たちは相当にきつかっただろう。

 5か月ほど前に待望の第1子が生まれ、グラウンド外でも新米パパとして頑張っている。その娘さんの名前「ミレー」の由来を聞いたところから、最も気になっていたファミリーネーム「ブルジョワ」の話題になった。

 南部なまり交じりで軽快な言葉運びをする話し方は、いかにもテキサス州出身だ。しかし、ファミリーネームはフランス系。しかも「ブルジョワ」だからインパクトがある。

「うちの祖父母がルイジアナ・フレンチ、いわゆる『クレオール』なんだ。自分のルーツを大事にする意味を込めて(フランス人の名前に多い)ミレーって名付けたんだよ」

 ちなみに「クレオール」とは米ルイジアナ州がフランス領時代だった1803年以前の移住者たちを祖先に持つ人々を指す。ジェーソンは祖父母以前のルーツまでは調べたことがないという。察するに彼の祖先はその昔、フランスの植民地時代にルイジアナの地に連れて来られ、ブルジョワ家に仕えたアフリカ系移民の子孫なのだろう。

 ここまでは少々暗くなってしまうような話かもしれない。しかし、私はいまだかつてルイジアナ最大の都市・ニューオーリンズの悪い話を聞いたことがない。植民地時代がもたらした美しい町並み、ジャズの発祥地、フランス、スペイン、アフリカの影響を色濃く受けたガンボやジャンバラヤなどの料理――。むしろ誇りを持っている人の方が多く、聞けば聞くほど行きたくなるような場所だ。

「あれほど最高な街はほかにないよ。ガンボの味思い出したら食べたくなってきた! 機会があったら絶対に行ってね!」

 ジェーソンは自身のルーツである第2の故郷・ルイジアナを再三にわたってPR。そして、ようやくバットの松やにを剥がす道具を取りに行ったのだった。

 ☆ジェーソン・ブルジョワ テキサス州ヒューストン出身。1982年1月4日生まれ。右投げ右打ち。175・3センチ、86・2キロ。2000年のドラフトで指名を受けたレンジャーズへ入団。ブレーブス、マリナーズでのマイナー生活を経てホワイトソックス時代の2008年9月9日にメジャーデビュー。その後はブルワーズ、アストロズ、ロイヤルズ、レイズと渡り歩き、昨季からレッズでプレー。今季は外野の全ポジションに就いており、躍動感あふれるプレーで観客を魅了している。