大谷翔平投手(27)も大ショック――。エンゼルスは7日(日本時間8日)にジョー・マドン監督(68)の解任を発表した。フィル・ネビン三塁コーチ(51)が代理監督を務める。6日(同7日)のレッドソックス戦に完封負けしたチームは1988年の同一シーズンの球団ワースト記録に並ぶ12連敗を喫して泥沼状態。一部の米メディアは人事刷新の可能性に触れていたとはいえ、電光石火の決断だ。投打「二刀流」の理解者である恩師の“途中退場”は大谷の今後に影響しそうだ。
レッドソックス戦前のエンゼル・スタジアムに衝撃が走った。球団がマドン監督の電撃解任を発表したのだ。今季は開幕から好調で一時はア・リーグ西地区首位に立ったが、6日に球団ワースト記録に並ぶ12連敗を喫して27勝29敗。過去にシーズンで12連敗したチームはポストシーズンに進出しておらず、デッドラインを超えていた。
マドン監督は2019年10月にエンゼルスの監督に就任。マイナー選手、コーチとしての在籍期間を合わせると通算34年目だ。02年はマイク・ソーシア監督の下、ベンチコーチとしてワールドシリーズ制覇に貢献した。レイズ監督時代は08年にワールドシリーズ進出。15年から監督を務めたカブスでは16年に108年ぶりに世界一に導いた。その手腕が評価されたわけだが、2年連続でア・リーグ西地区4位に低迷。今季が3年契約の最終年だった。
米スポーツサイト、アスレチックのケン・ローゼンタール記者によると、マドン監督は「(驚いた?)少し。いや実際はとても驚いた」と胸中を明かしたという。
マドン監督のエンゼルスでの最大の功績は間違いなく大谷のリアル二刀流を認めたことだ。18年は右ヒジ手術、19年は左ヒザを手術、20年はコロナ禍で60試合の短縮シーズンになったことで、大谷が望んでいた投打同時出場は封印されたままだった。しかし、マドン監督は大谷と話し合って二刀流起用を決断。また、ソーシア元監督は体への負担、疲労を考慮して、登板前と登板後を強制休養させていたが、出場の可否を大谷に委ねた。この対話路線が功を奏して昨季の大谷は二刀流でポテンシャルを発揮。メジャーの歴史を次々と塗り替え、満票でア・リーグMVPに輝いた。
今後もミナシアンGMは二刀流の起用法を基本的に変えることはないと思われるが、マドン監督と全く同じとは言い切れない。また、大谷にとって最大の理解者との別れは大きな喪失感につながるだろう。そうなると来年オフに取得するFAへの影響は必至だ。
昨年9月に大谷は「もっとヒリヒリするような9月を過ごしたかった」とポストシーズン進出への思いを告白。さらに、FAについて「エンゼルスのファンも、球団の雰囲気も好き。でもそれ以上に勝ちたい気持ちが強い」と発言し、地元メディアを中心に“移籍志願”と大騒ぎになった。大谷がFA市場に出れば史上空前の争奪戦に発展することは確実だ。
その発言を受けてミナシアンGMは昨年オフに先発右腕のシンダーガードとロレンゼンを補強。さらに救援左腕のループを獲得し、チームは開幕を好発進した。貯金は5月15日(同16日)に最多の11とし、米メディアもポストシーズン進出の可能性は高いと評価していたが、一転、ピンチ。今年も厳しそうだ。さらには信頼できる恩師が退団となれば、大谷がエンゼルスへの愛着よりも、野球選手の本能を優先して「勝てる」球団を選択するのは必然だろう。
マドン監督解任の影響は今季は目立たないかもしれないがマグマのようにたまり続け、来オフに大爆発しそうだ。