【元局アナ青池奈津子のメジャー通信】「えーと、待って、絶対見つけるから。だってすごくおいしかったんだよ。あった! ヒル・ファミリー・エステート! ファミリー経営ですごく居心地がよく、ここのお母さんがまるで僕を自分の息子のようにかわいがってくれたんだ」

「過去に衝動的に決めて良かったこと」という話題で、友人らと前日に思い立ってナパバレーのワイナリーを巡った時のことを話してくれたタイラー・ウェイド。気になったことはその場で解決させたい性分らしく、インタビュー中も何度か携帯電話で確認しながら情報を教えてくれる。

「ナチュラルワインって知ってる? 農薬や砂糖などが入っていなくて、飲みやすいんだ。ワインは好きだけど、実は2杯も飲むと翌日には二日酔いがひどい。でも、ナチュラルワインなら1本飲んでもケロッとしている」

 先日、大谷翔平投手に呼ばれることから、全米中に日本語の「イケメン」という言葉を広めてしまったタイラー。特に質問しなくても心地よく話題を展開させる彼の快活さもまた、私はとてもイケメンだと思う。

「趣味というほどでもないけど、僕はシンプルに家族や友人とちょっといいレストランで食事するのが好き。でも決してグルメではないんだ。この1年半近く、味覚と嗅覚がやられて、食事に全然興味が湧かなかったからね」

「忘れもしない2021年1月20日! ワインを飲んでいる時にって言うと、なんだかやたら“飲んべえ”みたいだけど、決してアル中ではないからね! でも、赤ワインを飲んでいてコロナにかかったことを気がついたんだ。あれ? 変な味がする。台所のシナモンや香辛料の入った棚を開けてみたら、いつもみたいににおいにむせることがない。ああ、来たって思ったよね」

 幸い、症状は軽く10日間の隔離の間も部屋で自主トレを行えた程度だったが、誤算だったのは、味覚も嗅覚も1年以上まったく戻らなかったこと。

「なくなってみて初めて気づいたんだけど、においがないって不快なんだ。シャワーを浴びても自分が臭くないか不安になったし、ガス漏れや火事が起こってもまったく気づかないのが怖かった。当時ニューヨークに住んでいたから、あのにおいがただの空気になったのは少しだけ良かったけどね」

「いろいろ試したよ。ヤンキースのチームドクターがエッセンシャルオイルをくれたり、オレンジを焦がしてブラウンシュガーと絡めて食べてみたり」

 そういえば、オレンジを丸ごと火にかけ、皮を炭火にしたものをむいて砂糖と絡めたものを食べて味覚が戻ったという動画がSNSでバズっていた。

「全然効かなかったばかりか、危うく火事を起こしそうになっちゃった(笑い)」

「そして、ある日突然戻ったんだ。レストランにいて、強烈なにおいが急に降ってきて、頭がクラクラするほどだった。今でもたまにエンゼルスの食堂で、胸がいっぱいになったりするよ。あとはあれだけ好きだったパスタもほとんど食べなくなったりと、まだ少し後遺症が残っているね」

 なんだか弾丸トークになってしまったが、次回は、夢だったエンゼルスでプレーすることについて。 

 ☆タイラー・ウェイド 1994年11月23日生まれ。27歳。米国・カリフォルニア州出身。185センチ、83キロ。右投げ左打ちの内野手。2013年のMLBドラフト4巡目(全体134位)でヤンキースから指名されプロ入り。17年にメジャーデビュー。主に二遊間、外野も守れる俊足のユーティリティーとしてチームを支え、21年には103試合に出場し、打率2割6分8厘。同年オフにエンゼルスに移籍した。今季、同僚の大谷から「イケメン」と呼ばれていることが米国内で話題となった。