【メリーランド州ボルティモア発】ヤンキースの田中将大投手(26)はボルティモア入り後、ご機嫌だ。2度目の登板となった12日(同13日)のレッドソックス戦で苦しみながら初勝利を挙げたからと考えるのが自然だが、それだけではなかった。当地ならではの理由があった。また、米メディアは相変わらず田中の右ヒジの状態を疑っている。

 14日(日本時間15日)、気温は15度を下回り、あいにくの雨だ。田中は午後4時20分ごろ、グラウンドに姿を見せると、最大60メートルほどの距離で主にセットポジションで遠投を行った。投球時のヒジの高さ、角度などを確かめながらおよそ20分間、じっくりとボールを投げグラウンド上での練習を切り上げた。

 田中はこの日もクラブハウスでナインやチームスタッフらと談笑するなど、とにかく笑顔が絶えない。右ヒジの状態が良好なことに加え、初勝利も大きいだろうが、実はもう一つ、理由がある。それは「カニ」だ。

 カニといえばボルティモアの名物で、特にワタリガニ科の「ブルークラブ」は有名。実は田中の好物の一つがカニなのだ。そんな右腕に朗報が。オリオール・パークのクラブハウスでご当地グルメの隠れた逸品が食べられることが判明したのだ。たっぷりのカニ肉に少々の具や「つなぎ」を入れて焼く「クラブケーキ」だ。田中はひと口でハートと胃袋をつかまれた。「ここの方が『ここ(球場)のクラブケーキがナンバーワンだ』と言うんですよ。確かにおいしかった」とニンマリ。この日も試合後、クラブケーキを心ゆくまで堪能するという。

 そんな笑顔の田中に対して、米メディアは相変わらずシビアだ。米スポーツ専門サイトのブリーチャー・リポートは、開幕から1週間経過した時点でのヤンキースに関する話題を5つ選んだブログを掲載。そのトップが「田中将大の健康状態はどうなのか」だった。

 田中はブルージェイズとの開幕戦で4回5失点(自責点4)で負け投手となり、12日のレッドソックス戦では5回4失点(自責点3)で勝ち投手となった。米メディアでは評価保留の状態だが、速球のスピードが落ちた要因についての議論は続いている。同サイトは「フォーシームの割合を減らした“ニュースタイル”を取り入れているところ」と説明。「田中が右ヒジを手術しなかったことは正解かどうか陪審は途中だが、正直に言って、良くは見えない」との見解を示した。

 また、レッドソックスなどでエースとして活躍し、今年野球殿堂入りが決まったペドロ・マルティネス氏がラジオで語った「田中は1年間もたない」とのコメントも引用。「ヤンキース首脳などの発言だけでは、田中が本当はどうなのか判断するのは難しい。いずれにしても今年ヤンキースが好成績を残すには田中のヒジが重要なことに変わりない」と結んだ。

 その他は「サバシア投手復活の可能性」「ロドリゲス内野手は好調を維持できるか」「ベテラン陣の健康」「二塁手と遊撃手の打力」だった。

 田中は18日(同19日)に登板予定の敵地でのレイズ戦に向け、15日(同16日)にブルペン入りが予定されている。心身ともにリラックスしている背番号19。状態は日ごとに上がっている。