【フロリダ州タンパ3日(日本時間4日)発】ヤンキースの田中将大投手(26)が、開幕前最後のブルペン投球で41球を投げ、春季キャンプを打ち上げた。1か月半に及ぶフロリダでの生活を「楽しかったから短く感じました」と笑顔で振り返ったものの、どこか名残惜しそうだった。ニューヨークの自宅に戻るのはうれしいはずだが――。

 納得の41球だった。ノーワインドアップで20球を投げ、セットポジションでの投球に入ると、ロスチャイルド投手コーチが右打席付近に立った。カーブの軌道を確認し小さくうなずくと、左打席で内角低めのスプリットを体感したときには「いいところに決まった!」と声を上げ、マウンド上の田中にOKサインを送った。

 その後、チームはキャンプ地で最後のオープン戦となるナショナルズ戦を行い、フロリダでの全日程を終了。オープン戦最後の試合が開催されるワシントンへと向かった。メジャー2年目のキャンプを終えた感想を聞かれた田中は「楽しかったから短く感じました」と、充実の表情で球場を後にした。

 キャンプ前から田中には右ヒジへの不安がつきまとった。手探りで調整法を見つけていく作業は苦労の連続だったに違いない。それでも「楽しかった」と振り返ったのは理由があった。右ヒジに不安がないことはもちろんだが、メジャー2年目、同世代の選手とも仲良くなり、チームに溶け込んだことも大きい。そしてもう一つある。「バスフィッシング」だ。

 アイドル、競馬、ゴルフの趣味を持つ田中だが、実は釣り愛好家でもある。以前からルアーのキャスティング(投げる)技術とセンスは抜群だったようで、駒大苫小牧高時代に野球部内でのレクリエーションで釣りをやった際、一人で“爆釣”し、周囲を驚かせたこともあった。

 そんな田中がバスフィッシングの聖地ともいわれるフロリダで釣りをやらないわけがなかった。休日や練習が早く終わった日などは、道具をレンタルして近くの湖へ。持ち前の技術で仲間や知人を尻目に、一人で釣りに釣りまくっていたという。「海はそんなに釣れないけど、バスは釣れますね。とにかく『引き』が楽しいんですよ。あれは興奮します」と田中。大自然の中、周囲の目を気にせずにひたすらバスとの戦いに没頭する、田中にとって最高のリフレッシュ法となっていたのだ。

 ヤ軍は4日(同5日)、ナ軍と最後のオープン戦を行った後、本拠地ニューヨークへ戻る。充実したキャンプを送った田中は、6日(同7日)のブルージェイズ戦でついに日本人投手4人目となる開幕投手の大役を務める。