<ズームアップ甲子園(31日)>昨夏準決勝の再戦は敦賀気比(福井)が、夏春連覇を狙った大阪桐蔭(大阪)に11―0と投打で圧倒し、春夏通じて初の決勝戦へ進んだ。

 ヒーローは背番号17をつけた恐怖の6番打者・松本哲幣(てっぺい)外野手(3年)だ。1回二死満塁から左越えへ先制の満塁本塁打をたたき込むと、続く2回も二死満塁から2打席連続の満塁弾を放ち、4打数3安打8打点と大暴れ。お立ち台では「今までにない以上の気持ち。最高です!」と満面の笑みを浮かべた。

 個人の2打席連続本塁打は2007年の大阪桐蔭・中田翔(現日本ハム)以来で、2打席連続満塁本塁打は春夏の甲子園を通じて史上初の快挙。8打点はPL学園の桑田(元巨人)、星稜の松井(元ヤンキース)らが持つ1試合個人最多打点の7を上回る新記録となった。

 そんな松本はチームメートからも恐れられている。口癖は「オラ!」といい、ある後輩選手は「オーラがあって最初は怖くて近寄れなかったです。性格も勝ち気で荒っぽくて、打撃練習ではインパクトの打球音が他の選手と全然違って普段からバンバンと柵越えしてまう怪力がある」と舌を巻くが「でも実は周囲にも気配りができるいい先輩です」と明かす。

 松本は気持ちを高める“イメージトレ”を欠かさず、大阪入り後、宿舎に持ち込んだ「熱闘甲子園」のDVDを見まくっているそうで、メンバー外の松本早馬(2年)は「夜は部屋で過去の熱闘甲子園のホームラン特集を見ながら『俺もこんなのを打ちたい』と気合を入れてましたけど、2打席連続満塁弾ですからね。歴史を塗り替えた哲幣さんが今度はDVDになるのはすごいこと」と誇らしげに話す。

 夏の大会は「熱闘甲子園」(朝日放送)だが、春の大会は毎日放送が名場面を集めた「みんなの甲子園」という番組があり、松本の活躍は「みんなの――」の2015年版DVDに収録されることは間違いのないところ。前日(30日)は野球アニメ「メジャー」(MAJOR)を見て自らを鼓舞し、試合直前の打撃練習では「今日は打てる!」と自己暗示をかけていた。

 プロ注目右腕の平沼だけでなく、打でも松本というニューヒーローが敦賀気比に出現した。