<ズームアップ甲子園>第87回選抜高校野球大会第9日(29日)は、準々決勝が行われ、大阪桐蔭(大阪)、敦賀気比(福井)、浦和学院(埼玉)、東海大四(北海道)が4強入り。大会屈指の剛腕・高橋純平(3年)を擁した県岐阜商(岐阜)は浦和学院に0―5で敗れた。プロ大注目の逸材の春が終わったが、この大型右腕にはダルビッシュ(レンジャーズ)や田中(ヤンキース)を意識した計画があった。

 敗戦後の高橋は「甲子園はすごく楽しかった」と振り返った。初戦(対松商学園)、2戦目(対近江)で2桁奪三振&自責点0と評判通りの実力を証明したが、この日はスタミナ切れの影響で終盤に5失点。11安打を浴びた右腕は「相手打線が振れていたので完敗」と潔かった。

 もっとも、これもある程度、想定内だったかもしれない。センバツでの高橋は1戦目から全力ではなく、段階を踏んで投球レベルを上げるやり方。テーマは「1試合100球以内で投げきる」。今回は初戦が110球、2戦目が112球、そして、この日が103球と、いずれもクリアできなかったものの「投げすぎない省エネ投法」を常に目指していた。

 そこにあるのは将来から逆算した“肩やヒジは消耗品”という意識だ。母・奈穂子さん(49)も「純平は体のケアを徹底しています。違和感があるとチームドクターに診てもらった後、整形外科のおじに診せて、レントゲンを撮って確認してもらっています。家ではマッサージを欠かしませんし、整体にも行っています」と証言する。

 その奈穂子さんが「行けるところまで行くというのが本人の考え。だから『海を渡る』という意識もあるのかなと思います」と明かすように、高橋にはメジャー入りの夢がある。しかし、ダルビッシュ、田中らが海を渡って故障。これについては若年期の投げ過ぎを指摘する説など様々な議論があるだけに、高橋もより慎重になっているわけだ。

「夏は個人的にはひと回り成長して帰って来たい。チームとしては優勝したい。とことん、夏は勝ちにこだわりたい」と話した高橋。春は夏の“予行演習”みたいなもの。プロ注目の逸材はしっかり先を見据えている。