【フロリダ州タンパ10日(日本時間11日)発】ヤンキースはキャンプで臨時コーチを務めているOBの松井秀喜氏(40)を、常勤でブライアン・キャッシュマンGMの特別アドバイザーに任命すると発表した。2012年の現役引退後、松井氏が日米を通じて球団に所属するのは初だ。日本人選手がメジャー球団のフロント入りするのも初。マイナーチームを視察し、選手も指導する。原辰徳監督(56)の後任候補に指名していた巨人は大ショックだろう。

 ヤンキースから担当記者にメールが送られてきたのは10日午後3時27分だった。内容を見てビックリだ。松井氏がキャッシュマンGMの特別アドバイザーに就任したという発表だった。球団によると、松井氏にとってヤ軍フロントとして初めて1年を通じての仕事で、キャッシュマンGMとゲイリー・デンボ選手育成担当副社長を補佐すると同時に、傘下のマイナーチームの試合に同行して監督、打撃コーチらとともに、選手に打撃指導する。

 それにしても特別アドバイザーとはいえ、フロント入りは驚きだ。メジャーでも日本人選手のフロント入りは初だ。もっとも、ヤ軍がそれだけ松井氏を高く評価するのもうなずける。松井氏はヤ軍に2003年から7年間在籍。916試合に出場して打率2割9分2厘、140本塁打、597打点。09年のワールドシリーズではMVPに輝く活躍を見せた。2年連続でヤ軍のキャンプに臨時コーチとして招かれ、昨季までシーズン中もマイナーで打撃投手を務めるなど若手の育成にも力を注いでおり、指導者としての適性を認めていた。

 また、松井氏が進塁打などで自分を犠牲にしてチームへ貢献した姿はファンの目に焼きついている。今でも愛されており、今キャンプでもサインを求めるファンが後を絶たない。“外様”とはいえ、ヤ軍にとって松井氏は宝なのだ。

 本紙は1月7日付紙面でヤ軍の共同オーナーであるハル・スタインブレナー氏が松井氏の囲い込みを厳命していることを報じた。松井氏の巨人復帰を恐れてのことだが、まさに電光石火で争奪戦に勝利した。現時点はフロントだが、近い将来、指導者としてユニホームを着ることになるだろう。ジーター監督誕生の暁にはベンチコーチ、もしくは打撃コーチとして隣で支える松井氏の姿が目に浮かぶ。これはヤ軍ファンならずとも日本の野球ファンも大歓迎だ。

 一方、巨人、日本球界にとっては悲報だ。巨人は松井氏が現役引退を発表した直後から、原監督の後任としてラブコールを送っていた。高橋由伸外野手兼一軍打撃コーチ(39)も候補に加えたが、大本命であることに変わりはなかった。しかし、松井氏がヤ軍のフロント入りしたことで、ここ2、3年での監督就任は消滅したといっていいだろう。すぐに日本球界に戻る可能性も薄れた。

 松井氏は2月3、4日に巨人キャンプを訪問し、DeNAを同5日から7日まで視察した。日程は1月下旬に急きょ決まったものだった。うがった見方をすれば日本球界への義理を果たしたのではないか。今後は米国を拠点にすると…。

 松井氏は11日(同12日)に会見する予定。何を語るのか注目だ。