ヤンキースから8年ぶりに復帰した広島・黒田博樹投手(40)が16日、広島市内のホテルで入団会見を行った。約150人もの報道陣に迎えられて登場した“おとこ気”右腕は古巣復帰への経緯やファンへの思い、今後への意気込みを熱く語った。周囲の期待も日に日に高まるばかり。2次キャンプ地の沖縄ではグラウンド内外で狂騒曲が奏でられそうだが、チーム内では黒田を守り、生かすための策が必死に練られている。

 紺のスーツにグレーのネクタイ姿で登場した黒田はメジャーからの復帰について「2006年に僕が最初にFA権を取った時にファンの人たちに自分の心を動かしてもらった。それで逆に今度は自分がファンの人たちの気持ちを動かせられればいいかなと。そういう気持ちが一番大きかった」と説明。かつて黒田残留を願い、横断幕やプラカードを掲げた赤ヘル党の熱意が最後に背中を押したことを明かした。周囲からは過剰なまでの期待を掛けられていることにも「プレッシャーをはねのけるためにいろいろなことにチャレンジして野球をやってきた。はねのける自信まではないが、そういう気持ちでいる」とすべてを受け止め、乗り越えていく覚悟だ。

 そんな“おとこ気”あふれる黒田に力を発揮してもらうため、首脳陣は2つのプランを検討している。その1つが若鯉による“黒田塾への入塾自粛”だ。メジャーでバリバリに活躍していただけに、若手は教えを請いたいところ。特にメジャーでも大きな武器となったシンカーについては「握りなどを教えてもらえたらうれしい」(大瀬良)とアドバイスが欲しいという選手が多い。

 しかし、チーム関係者は「チームに合流して黒田さんも自分なりにやりたいことがあるはず。そこでアドバイスも…となれば、手一杯になってしまいかねない」と危惧する。さらに畝投手コーチは「本人は求められれば教えると思うが、(シンカーが)日本のボールで実際にどう変化するかしっかり把握してからの方がお互いいいと思う」と話し、何でもかんでも教わればいいわけではないとの考えを示した。もちろん、ナインを黒田から遠ざけようというわけではない。むしろ逆だ。いきなりチーム最年長となる黒田は「若い選手もたくさん主力になって戦っているチーム。その中で僕がどういう立場でどれだけ貢献できるか見当が付かないが、チームに入って役割を作っていければいい」と意気込むが、そのあまりの存在感の大きさに他のナインが近づきにくい雰囲気になる恐れもある。

 そうなっては、チームにとっても“おとこ気右腕”にとってもマイナスだ。黒田の専修大の先輩でもある畝コーチは「周りも気軽に話せるようになるべく声を掛けていきたい」と言い、練習でミスをしたときに「何やっているんだ!」「大丈夫なのか」など、若鯉による“黒田イジリ”を奨励し、レジェンド右腕との垣根を作らないようにしていくという。

 いみじくも黒田は「帰ってきてよかったと思える野球人生にしたい」と話したが、そう思えるかどうかはチームを24年ぶりの優勝に導いてこそ。黒田を生かし、最高のパフォーマンスを発揮してもらうためにも、広島は必死だ。