広島のエース前田健太(26)が本紙に“新球封印”を宣言した。昨年、同級生のヤンキース・田中将大投手(26)に握り方のアドバイスをもらうなど本格的に取り組んだのがスプリット。習得すれば鬼に金棒と思われたが、あっさり決別するという。メジャーでも通用する球種であることは田中が証明しているが、一体なぜ…。

 昨春のキャンプでマエケンがチームのリーグ制覇、そして夢のメジャー挑戦をかなえるため新球として習得に臨んだのがスプリットだ。もともと「挟むボール」は苦手にしており、ヤンキース・田中から握りについて助言をもらうなど周到な準備をしたが、完成には至らずシーズン中に数球を投げただけだった。

 それだけに今キャンプではさらに磨きをかけ、スプリットをものにするつもりかと思いきやマエケンは「投げないつもりです。チェンジアップのスピードも上がってきていて打者から『フォークみたいに落ちる』と言われた。握りやスピードなどを変えていろいろできると思う」とキッパリ。140キロ近くまで球速が上がった高速チェンジアップで代用可能と考え、田中に習ったスプリットとは決別するという。

 決断はエースなりの覚悟の表れでもある。昨年はオープン戦終盤までスプリット習得のため試行錯誤が続いた。その影響からシーズンでは勝負どころで勝てず、チームはリーグ制覇を逃し、自身のメジャー行きも断たれる屈辱の一年となった。同じ轍は踏むまいという決意なのだろう。球種を増やさずとも勝算はある。「(今季は)ストレートを増やしていこうと思う。去年は安全にいこうと変化球が多かった」。昨年、新球のためにかけた時間と神経を、基本である直球を磨くことに注げば問題ないとの考えだ。

「いいキャンプを過ごして、いい準備をして、いい一年になるように頑張りたい」。今年のマエケンに迷いはない。