ヤンキース・田中将大投手(26)が22日、コボスタ宮城の室内練習場で自主トレを公開した。則本や辛島、松井裕らと汗を流した田中は、健康第一で先発ローテーションを守りきることを誓ったが、実はその舞台裏では古巣・楽天が、なんとも時期尚早なプランをすでに実行していた。

 午前11時過ぎ、田中を待っていたのは、50人以上の報道陣とフラッシュの嵐だった。室内練習場へ出る前に、ウエートトレーニングなどを済ませていたこともあり動きは軽快。松井裕相手にキャッチボールをすると、自主トレ中も一緒だった則本や辛島らとノックやダッシュをこなし、およそ1時間半でクラブハウスへと引き揚げた。

 1年ぶりとなる仙台での自主トレに田中は「ちょっと変わっている部分とか、施設もあったりしてびっくりした。でもチームメートだった人…というと遠い感じになっちゃうんですけど、慣れ親しんだメンバーにも会うことができたので、すごく帰ってきたなという感じはします」と穏やかな表情で語った。

 この日を迎えるまで、沖縄でトレーニングしてきた。昨シーズン終了後は、負傷した右肘をはじめ肩回りのトレーニングを主眼に考えていたが「全体的に。すべてしっかりできたと思ってます」とキッパリ。ことさら肘を気にする段階はクリアしていることをうかがわせた。意気込みを聞かれ「健康第一です、はい」と前を向いた。

 ヤンキースの春季キャンプは2月21日からフロリダ州タンパで行われる。昨年は初日から、サバシアや黒田とともにブルペンに入ったが「去年、早い段階でブルペン入ってましたけど、全然軽く投げているだけだったので、こういう状況でもいいのかと感じた。相手に合わせるつもりはないが、僕自身も無理にペースアップしてビュンビュン投げ始める必要もないのかなとは思ってます」。手探りだった昨年とは違い、メジャーのスケジュールに沿った調整で開幕を迎える。

 目標は先発ローテを守ること。そして「ゲームをつくれることが重要。まあ、試合に勝つことが一番ですよ。全部勝つ? それはもちろん。毎試合勝とうと思って投げているので。その気持ちがないとダメだと思う」。先発30試合、200投球回、貯金12をノルマとした。メジャー2年目に向け、強い決意を見せたが、古巣・楽天では立花球団社長が用意した“サプライズ”が話題になっていた。

 田中が球場入りし、球団事務所にあいさつに向かうと、立花社長はじめ全球団職員、そしてチームの裏方などが大集結して田中を迎えたのだ。球団広報も関知していなかったという、このサプライズは「感動系が大好きな社長主導で行ったもの」(チーム関係者)だそうだが、単なるサプライズだけではないようだ。

「実は社長、黒田の広島復帰にいたく感動したようでして。話は早いんですが、ゆくゆくはあのようになれば、と思っているみたい。今回のこれも、球団への愛着を持ってもらうための『ステップ』ですよ」(球団関係者)。高額オファーを蹴ってまで、広島への恩を貫いた黒田の“おとこ気ドラマ”の再現を楽天でも、というその第一歩が、この大歓迎の背景にあるというのだ。

 といっても、それはまだまだ先の話。さまざまな期待や希望が交錯するなか、田中のメジャー2年目が始まる。