若き主将誕生の本当の理由は――。巨人の新主将に坂本勇人内野手(26)が就任することが決まったが、ハワイV旅行中の原辰徳監督(56)は、来季から一塁手に転向する阿部慎之助(35)の負担軽減が目的と説明。だが、若武者にキャプテンの重責を任せた訳はそれだけではない。本人の成長を期待する以外に、球団としての切実な思惑もあるという。

 来季の「チーム解体」を宣言している原監督が、新生巨人の顔として指名したのが坂本だった。

 指揮官は近年、阿部、村田、長野、坂本の4人を“枢軸”と名付けてチームの中心に据えてきた。だが来季はすべてをゼロからスタートさせる。

「投手陣は先発も抑えも中継ぎもみんな横一線。もちろん打線も白紙」と話すが、そのなかでも坂本の立場だけは不動だ。

 ただし、その坂本も今季は打率2割7分9厘と不本意な成績に終わった。前任主将の阿部は「立場が人を作るということもある」と話す。原監督を含めた周囲は、主将を任されたことで坂本の一層の成長を期待している。

 一方、14日に26歳となった若きスターの主将就任は、メジャー流出阻止をもくろむ球団の“一手目”でもある。坂本は順調なら2年後に海外FA権を取得。来季取得する国内FA権行使の可能性は低いが、球団上層部は「勇人(坂本)にメジャー願望があるという話は聞いていないが、興味はあるはずだ。でも、キャプテンを務めていれば簡単に『出て行きます』とは言いづらくなるだろう」と“生涯巨人”へ外堀を埋める効果を期待しているのだ。

 現在メジャーでは、坂本と同世代の田中がヤンキースで活躍中。さらに同じ遊撃手として尊敬する存在だった阪神・鳥谷も今オフ海外FA権を行使した。今後の成績次第ではあるが、坂本にもいつ同じ願望が芽生えるかは分からない。

 すでに球団は“次の一手”も用意している。「早ければ今月末の契約交渉の席で、遅くとも来季中には大型複数年契約の交渉に入る。年数は最低でも4年以上。本人の意思が固まらないうちに勝負を決めたい」(球団上層部)と言う。

 坂本は原監督が進める再建構想の柱であり、チームの看板スター。2年後を見越し、球団は異例のスピードで引き留め工作に着手している。