【ヤンキース田中将大 161億円右腕 激動の1年(4)】ヤンキースの田中将大投手(26)がキャッチボールを再開させると、話題は復帰時期に移った。8月20日(日本時間21日)、故障後2度目のブルペン投球では初めて変化球を交えて35球。同23日(同24日)に打者を相手に35球を投げると、ジラルディ監督も「大切なのは明日、どんな感覚かを見ることだ」と慎重さを見せつつも、シーズン中に復帰させる意向を明かした。

 しかし、ここでブレーキをかけたのが田中だった。首脳陣は同28日(同29日)、デトロイトで行った実戦形式の練習から中4日とし、9月13日(同14日)のオリオールズ戦で復帰との青写真を描いた。しかし、デトロイトでの練習後、田中は「しっかり球数(49球)は投げられたが、全然何も良くなかった。まだまだ。とてもじゃないけど(試合で)投げられるとは思ってませんし、こんな状態じゃ」と断言すると、こう続けた。「無理なら『ノー』とハッキリ言わなければいけないと思うし、それは首脳陣側の考えであって、投げるのは僕。さっき(これまで)の段階でそんな会話はしてない。(復帰まで投球は)あと2回とか3回とかしてないので、それはこれから話していかないといけないことかなとは思います」

 翌29日(同30日)、田中は右腕の張りを訴え、およそ1週間投球練習を休止すると発表。田中が首脳陣に直訴したのだ。これでメディア、ファンの間で“シーズン中復帰の賛否”が再燃した。

 首脳陣がシーズン中にこだわったのは、田中が手術するかどうかでFA、トレードなどオフのチーム編成が大きく変わるからだった。ジラルディ監督も「彼は(年内に)どこかで投げるだろうし、投げないといけない。我々は来年の春季キャンプまでは待てない」と語り、シーズンが終了した場合はマイナーの教育リーグも含めて年内に投げさせることも示唆していた。田中が投球練習を休んだこの1週間、グラウンドは静かだったが、水面下では激しい“攻防”が繰り広げられていたのだろう。

 その後、田中は順調な回復を見せた。9月9日(同10日)に、再び実戦形式の練習で打者9人に44球を投じ「すべてのボールが数段、精度も含めて上がったかなと感じたし、何より投げている感覚、感触が試合レベルのものになってきたかなと感じましたね」と手応えを口にした。同15日(同16日)のフロリダ州タンパで行った実戦形式の練習では5回、65球を投げMAX150キロを記録。21日(同22日)のブルージェイズ戦での復帰先発が正式決定した。

 その間、右肘の負担を少なくした投球フォームも固まった。当初は右腕のテークバックを小さく取るなど“新フォーム”を模索していたが、本紙の直撃に「やめました」とひと言。

「新フォームではないですけど、完全に元に戻したわけじゃないんです。僕の中にあるいくつかの“引き出し”の一つを使っていく感じ。そのなかでも『負担』という部分では一番小さいやつです」と打ち明けた。

 紆余曲折、一進一退を繰り返し、ついに田中は75日ぶりにメジャーのマウンドに帰ってきた。6回途中、70球で降板したものの、5安打1失点、4三振と堂々の内容で13勝目を挙げたが、復帰後の投球を巡り、日本からは田中の今後を懸念する声も上がった。