元局アナ 青池奈津子「メジャー通信」

【エバン・ロンゴリア内野手(レイズ)】「彼女が先だから」――。この言葉がどれだけうれしかったか、きっと本人は知らない。とある日のヤンキー・スタジアム内クラブハウス。ビジターチームだったレイズのエバン・ロンゴリアを待っていた時の出来事である。

 エバンの目の前にいるのは、さっきも遭遇した見かけない顔の記者。実はこの少し前にヤンキース側で選手の取材をしていたら真後ろで聞き耳を立てられた上、ちょうど話が弾みだしたころになって「長い」と割り込まれたのである。

 取材する側の権利が強い米国でもこれはマナー違反。少しふに落ちないながらも譲りはしたのだが、どうやら狙う選手が一緒らしく、彼とはビジターのクラブハウスでも鉢合わせた。「またしても…」と思ったその時、冒頭の言葉を発したエバンが助けてくれたのだ。「順番は順番。約束したんだから」

 さすがはレイズの顔。必要なことをピシッと言える実に頼もしい存在だ。

 このエバンは12日開幕の日米野球のMLB選抜メンバーとしても来日中。出場が決まる前から「川崎(ブルージェイズからFA)に『日本語のサインの書き方を教えて』ってお願いしたんだ。日本に行けたら、彼が(カタカナで)名前を書いてくれたボールを見てサインを覚えるよ」

 意外な無邪気さが印象的なエバン。まだ未婚なのだが、なんと間もなく待望の第2子が生まれる。その子供の母親であり、昨年末に正式なフィアンセとなったジェイミー・エドモンドソンさんとエバンは、とても先進的なカップル。ジェイミーさんは、2010年に雑誌「プレイボーイ」のプレイメイトに選ばれたほどの美貌の持ち主でありつつ、警察官、アメフットのマイアミ・ドルフィンズのチアリーダー、そして現スポーツブロガーと華麗なる経歴を持つスーパー美女なのだが、2人の間にはすでに1歳10か月になるエレンちゃんがいる。

 でも「お互いにやりたいことがたくさんある」からと長きにわたって「結婚」にとらわれないスタイルを貫き通した。結婚式も子育てが落ち着き、彼女の体形が元通りになる2016年を予定しているという。

 そして今回、よくよく聞くと「出産予定日が11月18日なんだよ!」。まさに日米野球の真っ最中なのである。パートナーが出産に立ち会うのが一般的な米国において、これは衝撃的だ。「僕も驚いたけど、彼女は2人目だし、お母さんも助けてくれるからって。彼女は僕がやってみたいことに対して『ダメ』って言う方が嫌なんだ。自分の国の代表として行けるなんて名誉だからね。彼女は本当に最高なんだ。ありがたい」

「日本の人たちがしていることを体験したい」とエバン。ジェイミーさんの分まで異国の地で有意義な日々を過ごせることを願いたい。

 ☆エバン・ロンゴリア 1985年10月7日生まれ。29歳。米カリフォルニア州ダウニー出身。188センチ、95キロ。06年のドラフトで指名されたタンパベイ・デビルレイズ(現レイズ)に入団。08年4月12日のオリオールズ戦でメジャーデビューし、ルーキーイヤーから5番打者に定着すると同年の球宴にも初出場。レイズの球団初となる地区優勝にも大きく貢献し、ア・リーグ新人王にも輝いた。09年には三塁手としてゴールドグラブ賞、シルバースラッガー賞も受賞。現在もチームに欠かせない長距離砲として活躍中。