ジーターに有終サヨナラ打浴びても「光栄」

2014年10月19日 16時00分

元局アナ 青池奈津子「メジャー通信」

 

【エバン・ミーク投手(オリオールズ)】「彼の歯が、ものすごく白いって思ったんだ」

 

 こう口にしたのはオリオールズのエバン・ミーク投手である。「歴史を刻んだ投手が残した名言だ」と私は思った。

 

 9月25日に行われたヤンキース戦でエバンは、今季限りでの引退を表明したデレク・ジーターと対戦。ヤンキー・スタジアム今季最終戦で最後のピンストライプ姿となったジーターに9回一死二塁、自らの投じた初球の外角球を右前に運ばれてサヨナラ打されてしまった。

 

 そう、エバンはいわば“歴史のアシスト役”になってしまった人物。冒頭の言葉は、そのジーターとの対戦を振り返ってのコメントであった。

 

 実を言うと、その2日前となる23日のヤ軍戦でも彼は同じヤンキー・スタジアムで7回からマウンドに立ち、一死二塁の場面でジーターと対戦している。

 

「(あの時も)すごく楽しかったんだ。まずは何よりも彼と同じフィールドに立てたことが光栄。幼いころから彼を見て育ったんだ。その彼の最後の数回の打席の一つに投げる機会をもらえたことは、とてもスペシャルだった」

 

 もちろん普段マウンドに立つ時は投球に集中している。しかし、尊敬の念を抱くジーターには25日の時と同様、23日のゲームでも特別な思いが脳裏に渦巻いていたようだ。

 

 いつもならマウンドで考えていたことを時間の経過とともに忘れてしまうのに、対ジーターの記憶だけは今も鮮明。スタジアムを埋め尽くしたヤ軍ファンからの「ジーターコール」は逆にエバンを興奮させたという。

 

「緊張ではなかった。むしろ最高の気持ち。こんなふうに人々に尊敬される選手って、他にいるんだろうかって。なんだか、おかしくなって笑えてきたんだ。真剣なんだけど、口元がにやつく感じ。顔を上げたら彼もかすかに笑っているんだ。あの瞬間は互いに『打とう』『抑えよう』ってバトルをしていながら『よし、何がいい?』『真ん中? 低め?』みたいな…。言葉ではうまく言えないけど、打者と共有する感覚。張り詰めているんだけど、楽しいんだ。彼もそう感じているのが分かるんだ。そして僕は、これでもかってくらい渾身の力を込めて一球を投げた」

 

 この時の結果は四球。エバンはマウンドで思わずグラブを叩いた。でもヒットも三振も四球も関係ない。「あんなに楽しい野球は人生初めて」だったそうだ。そして、その2日後に再び対戦を終えた後もジーターについて「彼の歯が、ものすごく白い」と名言を残し、大笑いしたエバン。まず間違いなく、ジーターの本拠地最後の対戦相手として今後も語り継がれていくだろう。

 

 ☆エバン・ミーク 1983年5月12日生まれ。31歳。米国・ワシントン州ベルビュー出身。身長182センチ、体重102キロ。右投げ右打ち。2002年のドラフトで指名されたツインズに入団。05年5月に解雇されたが、同年9月にパドレスとマイナー契約。その後、デビルレイズ(現レイズ)からパイレーツへ移籍し、08年4月2日のブレーブス戦でメジャーデビュー。ダイナミックなフォームと力強い直球を武器に09年からセットアッパーに定着。10年には球宴出場を果たした。今季はリーグ優勝決定シリーズ進出を果たしたオリオールズでプレーしている。

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