【ニューヨーク25日(日本時間26日)発】ヤンキースの田中将大投手(25)が、今季限りで現役を引退するデレク・ジーター内野手(40)の本拠地ヤンキー・スタジアムでの“最後の雄姿”を見届けた。今季最終戦がボストンでのレッドソックス戦のため、ジーターがピンストライプのユニホームでプレーするのはこの日のオリオールズ戦が最後。メディアの多さ、ファンの熱気など、その存在の大きさをあらためて感じた田中は「キャプテン・ジーター」を独特の表現で語ってくれた。

 気温16度、冷たい雨が降るグラウンドに午後3時前に姿を現した田中は、およそ15分キャッチボールを行いクラブハウスへと引き揚げたが、ここで驚いたのがメディアの数だった。

 チーム、そしてジーターの本拠地最終戦となったため、クラブハウスには普段の倍ともいえる50~60人のメディア関係者がひしめいた。「すごいメディアの数ですね。これが(クラブハウスが狭い)ボストンだったらすごいことになりますよ」。田中はあらためてジーターの存在の大きさを感じた様子だった。

 試合開始前、ジーターがグラウンドに真っ先に飛び出すとファンはスタンディングオベーションを送った。背番号2がひときわ輝いて見えた。5-5の9回一死二塁で初球を右前へサヨナラ適時打。チームは6-5で勝った。劇的な一打で最後の本拠地ヤンキー・スタジアムでの試合を飾った。

 くしくもジーターの現役最後の年にヤ軍の一員となった田中にとって、ジーターのキャプテンシーはどう映っていたのか。「選手を引っ張るとか、そういうのよりも『存在感』ですよね。20年ヤンキースという球団で活躍されて…もうレジェンドですから。もちろん、声を出したり、先頭を切って何かをするところもあるけど(主将として)選手を集めたり、引き締めたりということはしない。もう存在感そのものですよ」

 その場にいるだけでナインをまとめる、不思議な魅力に“やられた”のだ。

 では、これまで接してきたキャプテンやリーダーにたとえると誰に近いのか。田中は“意外な人物”に重ね合わせた。「言ってみれば、稼頭央さんみたいな感じですよ」。古巣・楽天で主将を務める松井稼頭央内野手(38)が、ジーターに近いという。

「野球ももちろん、(選手に)イタズラしたり、とにかく楽しんでいる感じなんですよ。『楽しんでできればいいんだ』みたいな」(田中)。必死さや悲壮感を漂わすことなく、何でも楽しんで取り組む姿で選手をひきつける――そういうスタイルが2人の共通点とした。

 今季最終登板となる27日(同28日)のレッドソックス戦は、偉大なるキャプテンをバックに投げるラストチャンス。田中にとっても特別なマウンドになる。