【ニューヨーク19日(日本時間20日)発】右肘靱帯の部分断裂で故障者リスト入りしているヤンキースの田中将大投手(25)が、右肘への負担軽減のために取り組んでいた投球フォームの改良を“断念”していたことが分かった。ここまでノーワインドアップ時の立ち位置や、右腕のテークバックを小さく取るなど、試行錯誤を重ねていた…。一体何があったのか。田中がその真相を明かした。


 田中は21日(同22日)に本拠地ヤンキー・スタジアムで行われるブルージェイズ戦で復帰する。16日(同17日)の実戦形式の練習では、意識的に体の動きに「力み」を入れ、腕の振りの強度を上げてMAX148キロを記録。投球フォームにも、かつての躍動感がよみがえってきた。ここで気になるのが“新フォーム”だ。


 日本と比べ硬いマウンド、滑るボールなど、日本人投手がメジャーで必ずぶち当たる壁を、持ち前の適応力の高さでクリアしてきた田中だが、今回の右肘故障で想定外の負担がかかっていたことを痛感。7月18日(同19日)の会見で「ストレスがかかりすぎないように、効率のいいフォームで投げられるように改良しないといけない。同じ投げ方をしていたら、同じことを繰り返すだけ」とフォームの改良を宣言していた。


 そして8月16日(同17日)、故障後初のブルペンで見せた投球フォームは、その試行錯誤の跡が見て取れた。田中は「今、一番しっくりする形」と、感覚的なものであることを強調していたが、捕手に正対していたノーワインドアップの構えがやや三塁方向に向いていたり、テークバック時の右腕の軌道がコンパクトに改良されていたのだ。


 その後もキャッチボール時に、あれこれと体の動きをチェックする田中の姿があった。時には「これを(今後)やるわけではないですからね」と断りながらも、これまでよりやや前かがみにしたセットポジションで投げたこともあった。


 しかし、16日のフォームにはそういった動きは見られなかった。あらためて田中に新フォームについて聞くと、あっさりとこう返してきた。「やめました」。“元に戻す”つまり、故障前のフォームを続けるということか…。


 田中は「新フォームではないですけど、完全に元に戻したわけじゃないんです。僕の中にあるいくつかの“引き出し”の一つを使っていく感じ。そのなかでも『負担』という部分では一番小さいやつです」と説明した。田中の頭と体にインプットされている、数パターンの投球フォームの一つを“メジャー用”としてメーンで使い続けることにしたのだ。


 なぜ断念したのか。田中が投球動作について語る上で重要ポイントとなる「しっくりいくかどうか」に、はまらなかった点もあるだろう。もう一つ、フォームを変えることによって、変化球などの軌道が変わる懸念もあった。田中は「ネガティブには考えてはいないですよ」と前置きしながらも「違った球筋になることもあるでしょうけど、イメージ通りに近づけていく方法は自分の頭の中にある」と語っていた。最終的にこちらもしっくりいかなかったのかもしれない。


 故障からおよそ2か月。紆余曲折を経ながらも、田中がメジャーのマウンドに帰ってくる。あとは結果を残すだけだ。