自分の話をしたがらない彼が発した本音

2014年09月21日 16時00分

元局アナ 青池奈津子「メジャー通信」

 

【イアン・デスモンド内野手(ナショナルズ)】レギュラーシーズン終了まで残り2週間を切った。「いったいどこが勝ち上がるのだろう」と、落ち着かない毎日が続いている。取材する側がこうなのだから、ポストシーズン進出のかかるチームの選手はさぞや緊迫しているだろうと思っていた。

 

 ところがつい先日、ナ・リーグ東地区で首位のナショナルズのクラブハウスへ行ったら、いつもと変わらぬ落ち着いた風景だったことに驚いた。「メジャーリーガーは精神的にもタフでないと務まらない」とあらためて実感させられた。

 

 私にはナ軍の取材を行う上で、いつの間にか出来上がったルーティンがある。その通りに先日もクラブハウスの入り口付近に立っていたら「ほら」のひと声とともにコツンと肩を叩かれた。声の主はイアン・デスモンドだ。

 

「日米野球のリサーチはうまくいってる?」。前回取材した際に私が「日米野球に来ないの?」とたずねた話を覚えていたイアンは、いきなり逆質問を向けてきた。実を言えば、これは自分の話をするのが好きではない彼の常とう手段。プレーやチーム状況について少し突っ込もうとすると「今日は天気がいいね」と見え透いた逃げ方で本音をなかなか話そうとしない。

 

 そんなイアンが、いつもオープンに話をしてくれるのは家族のこと。うれしいことに、もうすぐ待望の第3子が誕生予定なのだ。予定日は10月10日。まさにポストシーズンの真っ最中である。「そうなんだよ、悩んでて。スケジュールを見ると、ちょうどその日に生まれるなら(試合のない)オフの日に当たるから立ち会えるんだけど、こればっかりはね…」

 

 第1子、第2子とも早産だったことからも予定日がずれ、ポストシーズンの試合日と出産日が重なる可能性は高い。

 

「奥さんは『試合に行け』って言うんだけど…。僕は立ち会いたい。子供の人生にちゃんと関わる父親でありたい」

 

 日頃は私に“逆質問”ばかりで、あまり自分の話をしたがらない彼がふと発した本音であった。

 

 イアンと同い年の妻チェルシーさんは10歳の時に「アシュトン小学校」で出会ったことから、三男坊の名前は「アシュトン」に決めているという。“アシュトン君誕生”の朗報についても、10月に入ったらイアンの口から聞けるのだろうか。そんなことに思いをはせながら、彼らの戦うポストシーズンの行方を眺めるのが実に楽しみである。

 

 ☆イアン・デスモンド=1985年9月20日生まれ。28歳。米フロリダ州サラソタ出身。右投げ右打ち。188センチ、95キロ。2004年のドラフトで指名されたエクスポズ(現ナショナルズ)へ入団。09年9月10日のフィリーズ戦でメジャーデビュー。10年に正遊撃手として定着し、12年に球宴初出場。パワフルな打撃力は定評が高く、12、13年と2年連続でシルバースラッガー賞を受賞した。「デズ」の愛称で人気を博し、チーム内でも強いリーダーシップを発揮するなど求心力も高い。

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