【ニューヨーク8日(日本時間9日)発】右肘靱帯の部分断裂で故障者リスト入りしているヤンキースの田中将大投手(25)が、全米オープンテニスで日本人初の決勝進出を果たし準優勝となった錦織圭(24)から大いに刺激を受けている。しかし、単に「すごい、すごい」と言っているわけではない。錦織のプレーを自分の投球に“重ね合わせている”というのだ。どういうことか――。

 この日、チームは試合がなく完全休養日となったが、田中はヤンキー・スタジアムで軽めの調整で汗を流すと、決勝戦に足を運んだ。

 今、田中が住むニューヨークで話題をさらっているのが錦織だ。まい夫人が親族総出で錦織の試合(3回戦)を観戦したことを自身のブログに載せていたが、当然、田中もその活躍ぶりに注目。世界を相手に戦うアスリート、年齢も1歳差という、まさに同世代とあって、クラブハウスのテレビで試合の模様が流れたときには真剣なまなざしを向けた。

 しかし、田中は単にテニスを見ていたわけではなかった。「(錦織の)準々決勝の相手(ワウリンカ)もそうだったけど、こっちの選手たちは、(時速)200キロを普通に出すような『ビッグサーバー』が多いじゃないですか。そんな中で錦織君が活躍できているのは、ラリー中の“駆け引き”だったりと思うんです。そういうのを見ながら自分の投球に置き換えることがありますね」。錦織のプレーを、自らの投球と重ねて試合を見ているというのだ。

 相手を左右に揺さぶりながら、心理の逆を突いたり、狙いを外すボールを打ち返す。ラリー中に行われる、プレーヤー同士のこうした駆け引きは「打者との勝負」にも似たものがあると田中は考えている。そしてこう続けた。

「自分の周りも速いボールを投げたり、パワーがある選手がたくさんいる。そのなかで、決してボールが速いとはいえない僕がやっていくには、変化球でかわしていくとか、そういう(駆け引きの)部分になっていきますからね」。力に勝る外国人選手を相手に、日本人である自分がどう戦っていくのか。その“原点”を再確認できたのだ。

 今は復帰に向けリハビリの毎日だが、気持ちは常に打者と対峙している。マウンドでメジャーの強打者と駆け引きする田中の姿を見る日が待ち遠しい。