田中「復帰遠い」不満発言の深意

2014年08月30日 09時00分

【ミシガン州デトロイト28日(日本時間29日)発】右肘靱帯の部分断裂で故障者リスト入りしているヤンキースの田中将大投手(25)が、敵地コメリカ・パークでのタイガース戦の試合前に実戦形式の打撃練習「シミュレーション・ゲーム」に登板して、3イニングに相当する49球を投げた。右肘に不安は感じなかったものの、制球が定まらなかったことに不満顔。9月中旬の復帰が見込まれるなか、「復帰は近いものとは思っていない」と慎重姿勢を示した。もっとも、これは弱気ではなく、本番モードにギアを上げたことを意味する。

 故障後2度目となる打者との対戦。相手は同僚のライアンだった。ジラルディ監督、ロスチャイルド投手コーチが見守る中、1イニング15球の想定で打撃ケージを外し、捕手とサイン交換してカウントを取り、イニングを終えるごとに約5分間の休憩を挟むなど、実戦に近い形で行われた。

 右打者のライアンが左右交互の打席に立つという違和感はあったものの、田中は「どういう状況であれ、試合でもどういう状況でやるかもわかりませんし、それが関係してはいけないと思う」と気を引き締めて臨んだ。

 力を入れたわけではなかったというが、フォーシームは力強さを感じた。しかし、制球が定まらず変化球とともに逆球や高めへ抜けるボールも。宝刀スプリットも鋭く落ちる一方、引っ掛けることもありバラつきが見受けられた。延べ10人の打者に49球。スプリットを含めてすべての球種を投げて、ヒット性が2本、四球2、見逃し三振2だった。

 投球を終えた田中はぶぜんとしていた。肘に不安を感じたのではなく、投球があまりにもふがいなかったからだ。「今日はすべてのボールに関して良かったなと思うものがなかった。全然何も良くなかったので、収穫はそんなになかった。しっかり球数は投げられましたけど」。復帰までの課題について聞かれると、田中は厳しい言葉を吐き出した。

「アメリカのメディアからもそうですし、周りから『いつぐらいで復帰は考えているんですか』と聞かれることも多くなってきていますが、こんな状態ではまだまだ。とてもじゃないけど投げられるとは思ってない。慎重に、しっかりとやっていくことが大事だと思ってます。実戦というか(シーズンへの)復帰に対しては、まだまだ自分の中では、そんな近いものだとは思っていない」

 田中にとって復帰は、マウンドに上がることではなく、相手を圧倒する投球で勝つことを意味する。ジラルディ監督は、2度の実戦登板を経ての復帰を視野に入れており、9月13日(同14日)のオリオールズ戦での復帰が濃厚だ。

 しかし、田中は「(復帰まで実戦が)あと2回とか3回とか、そんな会話はしていない。それはこれから話さないといけないこと」と断ったうえで、こう語った。「それは首脳陣側の考えであって、投げるのは僕。無理なら『ノー』とハッキリ言わなければいけないと思う。僕がそれで『もうちょっとこれ(リハビリ登板)の回数を増やして』というコミュニケーションも必要だと思います」と、慎重な姿勢を見せた。

 一方、田中の投球を見守ったジラルディ監督は「良かった。スピードガンはなかったが、スライダー、スプリッター、カーブ、速球ともポジティブだった」と評価。今後については「健康なことが一番。明日も異常がないことを願っている。どこかで復帰するわけだが、いつ復帰するかより、毎日毎日が大切だ。次のステップへすべてうまく進んでいる。プロセスに否定的なことはない」。構想通りを強調した。

 前日の時点でア・リーグ東地区首位のオリオールズと6ゲーム差、ワイルドカード争いでは出場圏のマリナーズと2・5ゲーム差と苦しい状況のチームにとって田中は切り札だ。復帰時期がずれ込むほどプレーオフ進出の可能性がしぼむことになる。

 万全の状態で復帰したい考えの田中は地区優勝争い、ワイルドカード争いの山場に間に合うのか。背番号19がプレーオフのマウンドで躍動する姿を誰もが待望している。