元局アナ 青池奈津子「メジャー通信」

【ホセ・タバタ外野手(パイレーツ)】去年から気になっていたこと。それはパイレーツに所属する巨漢の外野手、ホセ・タバタの首筋である。そこには何とキスマークが付いているのだ。真っ赤な、明らかに女性のものだと分かるくっきりとした口紅の跡。すれ違った瞬間に目に入ったものの「拭いた方がいい」と言いそびれて悔やんでいると、近くにいたパ軍のコーチが笑いながら「あれはタトゥーだよ」と教えてくれた。米国で変わったタトゥーはいろいろ見かけてきたが、あんなデザインは初めてだ。

 そんなわけで先日、念願かなってホセに直撃できた。いきなり首筋のタトゥーについて聞かれたホセは大爆笑しながら「奥さんの本物の唇だよ。ある日、朝起きて言ったんだ。『ねぇ、ママ、僕のためにあることをしてくれたら、君の唇を僕の首に刻むよ』と」。

 ホセ自身の思いつきだったそうだ。余談だが、「ママ」とはラテン系の男性が、セクシーな妻か彼女に対して使う呼び名であり、それに対し女性は「ダディ」か「パピ」と返す。

 ともあれ、ホセは妻のアロマーさんに「人には言えないお願い事」(これに関しては、どうしても明かせないらしい)をして、そのお礼にタトゥーを入れることに。

 さっそく翌日、マイアミの有名なタトゥーショップ「マイアミ・インク」へ。そこで彫り師が奥さんに「さあ、キスをしてくれ」と言って付けたキスマークが、そのまま永遠に残ることとなった。

「妻は僕の全て。愛している。一生一緒にいたい」

 照れ笑いしながら語るホセは本当に幸せそうだ。当然ながら私のように間違える人は多く、毎日必ず「口紅がついているよ!」と忠告してくれる人が後を絶たない。そのたびに彼は「妻の唇はビューティフルでセクシーだろう?」とケラケラ笑っているから、全く気にしていなそうだ。

 さて――。実を言えば、ホセにはアロマーさんの前に結婚していた23歳年上の前妻がいた。デリケートな話なので多くは語らないが、この前妻は夫に妊娠を偽った上に生後2か月の見知らぬ赤ん坊を誘拐した罪で現在、懲役24年の禁錮刑で服役中である。

 ホセが20歳の時に起こった事件で、当人もニュースを聞かされた時は心臓が飛び出るくらい驚いたそうだ。

 その後、裁判やら離婚調停やらの大変な時期を人知れず経てきたホセ。それだけに彼が今のすてきな奥さんに出会えたことを心からうれしく思う。

 ☆ホセ・タバタ ベネズエラ・アンソアテギ州エル・ティグレ出身。1988年8月12日生まれ。25歳。身長180センチ、体重95キロ。17歳の時にヤンキースと契約。その後は傘下のルーキー級ガルフコースト・ヤンキース、タンパ・ヤンキースでプレー。2008年7月にパイレーツへトレード移籍。10年6月9日のナショナルズ戦でメジャーデビューし、いきなり2安打を放つ。巨漢ながらも俊足巧打が売りで、リードオフマンに起用されることも多い。パ軍とは16年までの長期契約を結んでいるが、現在はマイナー降格中。