【ニューヨーク18日(日本時間19日)発】右肘靱帯の部分断裂で故障者リスト入りしているヤンキース・田中将大投手(25)が、離脱後初めてヤンキー・スタジアムに現れ、練習を行った。患部にサポーターを着けたエースは日米両メディアに対応。全治まで最低6週間と診断された時の心境などを語るとともに、故障につながった投球フォームの修正に乗り出すことを明かした。既に気持ちの切り替えはできている様子で、悲壮感のない、普段通りの元気な姿を見せた。

 田中はこの日、レッズ戦の試合前にヤンキー・スタジアムで練習。トレーニングルームでエアロバイクをこぐなどして汗を流した。

 楽しみにしていたオールスター出場を回避して治療に専念。14日(同15日)に自身の血小板を患部に打つPRP注射を行った。「1年間ローテを守る」という目標も実現不可能になり、さぞ落ち込んでいると思われたが、離脱後初めて報道陣の前に現れたのはいつもの田中だった。

 練習後に右腕にサポーターを着けた格好で日米両報道陣に対応したエースは、囲み取材冒頭の“お通夜ムード”を感じ取るや「やめましょうよ、この雰囲気」と苦笑い。その顔に悲壮感など全くなかった。

 田中によると、実際に右肘の痛みを感じたのは8日(同9日)のインディアンス戦の登板後で「(痛みの度合いは)経験がないわけではなかったですね」と、それほど深刻には受け止めていなかった。その後、シアトルでチームドクターに右肘靱帯の部分断裂と診断されたことについては、「『あ、そうか』という感じですね」と振り返ったが、当初は簡単に割り切れない気持ちもあったという。「自分自身もキャンプの時から『ローテ守って1年間投げ抜きたい』とずっと言ってきてましたから。チームがこういう状況の中、離脱してしまって申し訳ない。ふがいない気持ちは持ちました」

 だが、これまで太ももの肉離れ、右大胸筋部分断裂、腰痛など数々の大きなケガを経験している右腕はすぐに気持ちを切り替えた。「そんな姿をいつまでも見せてもいられない。こうなったことはしょうがない。そこにしっかり向き合って治していかないと、とは思っています」。この日、明るく振る舞えたのも過去の経験が大きい。

 田中の表情とは裏腹に米国では復帰に関して“手術ありき”の見方をされている。エースの右肘は現状でトミー・ジョン手術と呼ばれる靱帯修復手術の必要はないという診断をされている。だが、過去に治療とリハビリだけでカムバックした例が少ないことから否定的な意見が多い。ヤ軍・キャッシュマンGMも「6週間で痛みが引かなければその(手術)選択肢もある」と話している。

 そんな声が飛び交うが、現時点でエースの頭に「手術」の文字はない。「診てくれた先生がそう言ってくれたので。僕はドクターではないし。そういう言葉を信じて僕はプログラムに沿ってやっていくしかないと思います」。人生で初めて右肘にメスを入れる可能性があることは認識しているが、自身では徐々に患部の痛みが引いている実感もある。また、再発防止のために投球フォームの改良に着手することも明かした。今は早期復帰のイメージしかない。

 今後はチームの遠征には同行せず、ニューヨークでトレーニングを続行。注射を打った右肘はしばらくは安静にし、痛みが引き次第、ドクターの再検査を受けてリハビリを続ける。その後、投球許可が下りればキャッチボールから再開する予定だ。

「自分のできることを今やっていって、またあのマウンドへ戻れるようにリハビリ、治療をやっていくだけですね」と力強く話した田中。我慢の日々は続くが、エースは至って前向きだ。