大暴走デビューだ。レッドソックスの澤村拓一投手(32)が12日(日本時間13日)のレイズ戦の5回から2番手でオープン戦初登板。2/3回を1安打1失点、1三振3四球だった。初球から最速97マイル(約156キロ)をマークしたが、二死から二塁打、3連続四球の押し出しで失点して交代。26球を投げてストライクは10球で予定の1イニングを投げ切ることができず、悔しい“メジャーデビュー”となった。

  登板後の澤村は「いい緊張感があったけど、投げながら少し神経質になってしまった。ボール自体は途中まで悪くなかった。(二死から)二塁打を打たれて、後続を打ち取れずとても反省している」と唇をかんだ。

 オープン戦ではあるが、澤村にとってレッドソックスでのデビュー戦。5回表、4イニングを投げ無失点に抑えた先発右腕リチャーズに続く2番手としてフロリダ州のキャンプ地ジェットブルー・パークのマウンドに上がった。

 7番打者・ウォールズへの初球は97マイル(約156キロ)のストレートでボールとコールされたが、4球目に右飛に打ち取り一死。続く8番打者・オドムは2―2からスプリットで空振り三振。だが、9番の左打者・マストロブオニに逆方向の左翼フェンス直撃を食らう二塁打を許すとリズムが一変した。なんと、ここから3者連続四球、押し出しで1点を失い無念の降板。日本で何度となく繰り返されたシーンが“メジャーデビュー戦”でいきなり再現された格好だ。

 うなりを上げる剛球に暴れ球。持ち味とウイークポイントをノッケから“お披露目”した澤村は「全体的に上半身が突っ込むという感じはしますし、自分の感覚よりも腕が遅れて来ているし、日本よりも硬い(マウンドの)傾斜に対してアジャストしていかないといけない」と語った。メジャー球、硬いマウンド、狭いストライクゾーンへの対応…。優れた投手でもいきなりメジャー流に対応することは容易ではない。とにかく、今後に向けて取り組むべき課題がはっきりと見えた登板となった。

 その一方、レッドソックス戦のラジオ中継を行っているWEEIのロブ・ブラッドフォード記者が澤村に行った単独インタビューの内容を、澤村が投げている最中にラジオ解説として紹介。レッドソックス入りした舞台裏について詳しく語った。

 巨人時代のおよそ約半年前のこと。日本で48勝75セーブ、防御率2・77の成績を残し、新人王にも輝いた澤村がファームのどん底に落ちた時「このまま二軍で野球人生を終えてしまうのではと思っていた」こともあったという。

 だが、澤村は「そう感じてはいましたが、その事実を受け入れたくはありませんでした。その事実を受け入れ、自分が置かれている状況を受け入れ、また上を目指すようになった」。

 その直後にロッテ移籍。新たな道があった。環境が変わったことに加えて、投球板の踏む位置を(一塁側に)変えるなどの調整が功を奏し、シーズン終盤の22試合で21回を投げ29奪三振、防御率1・71をマーク。見事に復活し、メジャーの扉までこじ開けた。

 どん底から這い上がってきた男がアメリカンドリームを手にするか。“米国版・澤村劇場”の幕が上がった。