【ニューヨーク1日(日本時間2日)発】米大リーグ、アストロズのデータベースが何者かによってハッキングされ、機密情報が流出した。前代未聞の事態に全米が騒然としている。その中にはヤンキースがイチロー外野手(40)を開幕前にアストロズにトレードしようとしていた内容も含まれていた。アストロズは米連邦捜査局(FBI)に捜査協力を依頼。犯人特定に乗り出した。

 アストロズが独自に開発したデータベース「グラウンド・コントロール」が何者かにハッキングされ、機密情報がインターネットの情報サイト「ANONBIN」で公開された。このニュースは前日、スポーツ専門情報サイト「デッドスピン」が最初に報じ、その後「ヤフースポーツ」が後追いしたことで全米に広がった。

 流出したのはアストロズの昨年6月から今年3月までの移籍交渉に関するメモ。その中にイチローの名前もあった。「2014年3月18日 (ヤ軍GM補佐の)ビリー・エプラーがDS(ア軍GM補佐のデービッド・スターンズ)にイチローをトレードすると連絡してきた。年俸を200万ドルまで下げるそうだ」

 つまりイチローの年俸650万ドル(約6億6000万円)のうち、450万ドル(約4億5600万円)をヤ軍が負担するという内容だ。もっとも、イチローの放出は驚くことではない。ヤ軍は昨年オフにFAでエルズベリーとベルトランを獲得。生え抜きのガードナー、昨季34本塁打のソリアーノもおり、イチローは5番手だった。複数の米メディアが開幕前にヤ軍がイチローの年俸の大部分を負担してトレードすると報じていた。当時は既定路線だったのだ。

 それにしてもイチローの胸中は複雑だろう。前日までのイチローは規定打席に足りないものの、打率2割9分1厘、0本塁打、10打点、5盗塁。再三、好守を披露している。1日(同2日)付のスター・レジャー紙はイチローが通訳を介して答えた「それについて今話すことは、誰にとっても好ましいことではない」とのコメントを掲載した。

 アストロズは前日、今回の機密情報流出を受け、「先月(5月)、機密情報が不正に奪われた。米大リーグ機構のセキュリティー部門とFBIに問題解決の協力を依頼した。掲載された情報は捏造や誇張されたものも含まれている」との声明を発表。犯人を徹底的に追及する方針だ。今後、トレードに影響する可能性も…。

 一夜明けた1日、全米紙・USAトゥデーは「アスレチックスのビリー・ビーンGMがマネーボールの秘密を漏らされたわけではないが、アストロズのコンピューターからハッキングされた情報は、野球界におけるトレードがどのように行われているかを知るうえで刺激的だ」と報じた。そして「アストロズのGMは漏れた情報に名前が出てきた球団への謝罪に追われた。各球団は立腹しながらも協力を惜しまないと話していたという」と付け加えた。ヤフースポーツ(電子版)は「ある者はアストロズのコンピューター管理を批判するだろう。しかし、いくつもの球団がセキュリティーやパスワードを二重管理するようになったことは確かだろう」と伝えた。

 球団のデータベースに対するセキュリティーの甘さが露呈した今回の流出騒動。これがきっかけとなり、再発を防げればいいが…。