マリナーズのキーナン・ミドルトン投手 バスケ好き公言も手術による長期離脱が別人に変えた

2021年03月02日 14時00分

エンゼルス時代のミドルトン(ロイター=USA TODAY)

【元局アナ青池奈津子のメジャー通信=キーナン・ミドルトン投手(マリナーズ)後編】「コーチ、どうしてコートに来ないの?」

 ヒジの手術のリハビリ明け、2年ぶりに行った母校の練習コートに、なんとなく近づけずスタンドに座って見ていた彼に気づいた数人の生徒たちが駆け寄った。

「一緒にバスケやろうよ!」

「マウンドに戻った時には、とても変な感じだったのに、バスケのコートに立った時は、緊張も何もなく、自然に戻れた。僕にとってバスケは憩いの場所」と、キーナン・ミドルトン。 

 大リーガーにまでなったのに「野球はいまだによく分からない」と言ってしまうような人。

 私が好きなエピソードは「ボッチ事件」で、ちゃめっ気があり、いたずら好きなキーナンは、新人時代に何かやらかしては試合中のブルペンで「無言の刑」を受けていたらしい。
「一人だけ皆とは離れた隅っこに座らされて、誰ともしゃべるなって。ファンに何してるの?って聞かれて話し始めたら、先輩が『ごめんね、こいつ今誰とも話しちゃいけないから』って止めるんだよ。揚げ句にテレビ中継でもその様子をアップにされて、アナウンサーに『彼は何をしてるんでしょうねぇ?』なんて言われる始末。一人でも大丈夫だけどさ、グーフィーだから」と、あどけなく「そういえば自分以外隅に座らされている選手は見たことがないな」と笑いを誘いながら教えてくれた。

 でも、そのリラックスした印象とは対象的に、実はとても真面目だ。

 オフの間、地元ポートランドでトレーニングをするキーナンは、午前中に野球のトレーニングを終えると、午後はバスケットボールのコーチになる。その度合いがボランティアの域を超えている。

「基本的に毎日コーチ。野球のトレーニングは全部午前中にやっちゃって、子供たちの授業が終わった午後3~6時がバスケ時間。試合があると午後2~9時ごろまで。一緒に走って、対戦したり、攻め方を見せたり。遠征にもついて行く。バス4時間移動とか、ラスベガスとか」

 マウンドにいる時間よりコートにいる時間の方が長そうだ。

「間違いない!」と、ノリ良く笑いが絶えない会話の中にも「バスケは最初に恋に落ちたスポーツ。最初に出会った自分の居場所。バスケをしている時だけは学校や授業のことも何も考えなくて良かった。自分をさらけ出せるところ。それはコーチをしていても同じ。子供たちのことだけ考えて、没頭して、たとえそれが7時間だろうとも楽しくてあっという間に時間が過ぎていくから、苦にならない」。自分が高校生だったらこんなコーチに出会いたい。

「野球は?」と聞くと「野球もすごく楽しいよ。でも、自分がマウンドに立っている時はプレッシャーが違う。コーチの時は、全力で彼らの助けになれないかってことしか考えていないけど、自分は負けず嫌いだから、出て行ったら絶対に勝ちたい。負けたくないからとても真剣」。

 だからこそ、ヒジの靱帯断裂による長い戦線離脱は、自分をすごく見つめ直す機会になったという。

「自分の体をどうケアすべきか、同じ状況に陥らないためにはどうしたらいいか。あとは、離れたところで野球を見始めた。これまでは戦略を聞いているだけだったけど、観戦しながら自分の戦略を頭の中で練ってみたり。誰かに言われた見方じゃなくて、自分の意見。それがリハビリの大きなモチベーションになった。とにかく毎日見て、見て、見て、わかることを吸収しようって」

 1年前、あんなに野球がスローと言っていたキーナンが、なんだか別人に変化していた。
「案外、将来は野球のコーチか監督になっているのでは?」と率直な感想を述べると「そうかな? そうかな? 俺、ダブルスイッチが何かまだよく分かってないんだけど、大丈夫かな? でも、ジョー(マドン監督)見ていたら、似ているところが多い気がしていたんだ。のんびりしたところとか」と、冗談めかしながらまんざらでもなさそうだった。

 この春会えるのを楽しみにしていたのだが…まだ当分お預けのようだ。

 ☆キーナン・ミドルトン 1993年9月12日、米国・オレゴン州ミルウォーキー生まれ。27歳。191センチ、98キロ。右投げ右打ち。投手。2013年ドラフト3巡目で指名されエンゼルス入り。17年5月5日のアストロズ戦でメジャーデビュー。同年は64試合に登板し、6勝1敗3セーブ、防御率3.86。18年は守護神として期待されるも5月に右ヒジを負傷してトミー・ジョン手術を受ける。19年8月にメジャー復帰し、同年は11試合に登板して防御率1.17と復活。20年12月にノンテンダーFAとなり、マリナーズと契約を結ぶ。 

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