【カナダ・トロント発】“鬼の坂路調教”だ。ヤンキースの田中将大投手(25)が24日(日本時間25日)、ブルージェイズ戦の試合前に敵地ロジャーズ・センターで練習。次回先発が予定される28日(同29日)のレッドソックス戦に向け、調整メニューを変更した。普段のグラウンドでのランニングではなく、階段ダッシュを敢行。直近2試合は自身の制球に納得がいっていない右腕は、下半身に負荷をかけることで打開する考えだ。

 ブルージェイズ戦の試合前、いつも通りキャッチボールを行った田中はグラウンドを後にすると、クラブハウス近くのトレーニングルームで何かを確認。すぐに堀江通訳とともに再びグラウンドに姿を見せると、おもむろに一塁側のフェンスを乗り越えた。

 いったい、何をする気なのか。まさか、ロジャーズ・センターのグルメを堪能しに行くのか…。いや、違う。真剣な表情に切り替わった右腕は一塁側観客席の階段をダッシュし始めた。

 立て続けに6本走ったところで“珍客”も現れた。ヤ軍のジラルディ監督だ。たまたま電話をするため、グラウンドに姿を現していた指揮官は、田中の姿を見つけると近づき、堀江通訳に何やら話しかける。「シンゴ(堀江通訳)、君がラビットになって先に走るんだ。マサヒロはそれを追いかけろ。ドッグレースだ!」

 まさかの注文に慌てて走り出す堀江通訳。それを追いかけて田中も2本、階段ダッシュを追加し、2人でさわやかな汗を流した。まさに、“ジラルディ調教師が見守るなか行われた坂路調教”だった。

 これまで登板間のランニングメニューは主に、グラウンドで外野のポール間を“馬なり”で走るものだったが、この日はメニューを変更。その意図は本来の制球力を取り戻すためだ。

 田中は6月に入ってから、4試合連続で本塁打を献上。特に直近2試合は甘い球が増えており、自身でも「全然よくなかった」と納得がいっていないことを明かしている。

 そんな状況でもメジャーデビューから15試合連続でクオリティースタート(6回を自責点3以内)を決めているのはさすがだが、夏場を迎えるにあたり、このままでは苦しくなる。下半身主導のフォームを保つためにも、足腰により負荷をかける必要があったというわけだ。

 調整メニューの変更で立て直しを図った田中。“ガラリ一変”となるか。