巨人は11日、阪神戦で0-1で完封負けを喫し、先発の新エース菅野智之投手(24)の開幕からの連勝は6でストップした。とはいえ打線の援護がない中で、7回6安打1失点、9奪三振と存在感を発揮し、今季初黒星にもチーム内の評価は高まるばかり。最近では、その“表情”にもスポットライトが当たっている。

 開幕からの連勝記録こそ止まったが、この日も「エース」の名に恥じない投球だった。7回1失点の内容でも「今日は役割を果たせなかった。1点には抑えたが、自分としてはまったく納得いかない。こういう厳しい試合で勝ちきれないのが甘いところ」と猛省したのは、それだけ志が高い証拠でもある。


 1年目の昨季も13勝6敗と好成績を残したが、今季は数字以上の迫力が加わった。何が右腕を成長させたのか。菅野を見守るスタッフは「アリゾナでの自主トレの成果も大きいとは思うけれど、去年のCSと日本シリーズで、マエケン(広島・前田)とマー君(ヤンキース・田中)に続けて投げ勝ったことが自信につながっている」とみている。


 超一流と称される投手との投げ合いが糧になったことは、投球スタイルの変化から読み取れる。昨季は走者を背負うと変化球に頼ったが、今季は逆に直球で押す場面が増えた。前出スタッフは「スーパーエースと称される投手は、みな直球を勝負球として使える。その点に気が付いたのでしょう」と話す。


 変化は投球だけではない。菅野と仲の良いナインは「今年の智之は顔がマー君に似てきた」と指摘する。「去年入ってきたときはどちらかというと“さわやか系”でニコニコしていたけど、今年はマウンドでずっとブスッとした顔をしているでしょ。マー君もそうですけど、あの仏頂面が守っている選手には安心感を与えるんです」という。


 ヤ軍移籍後も田中は闘争心あふれる投球で連勝記録を伸ばしている。その頼もしい姿に、辛口のNYメディアは「ブルドッグ」と名付けて称賛している。菅野もまずは“ブルドッグフェース”に近付いてきたというわけだ。


 菅野は田中が5勝目を挙げた9日のブルワーズ戦を早朝から宿舎でテレビ観戦した。その感想を聞いても「見てはいましたが、自分には関係のないことですから」とそっけなかったが、ともに連勝記録で注目される存在として、刺激を受けたのは確かだろう。


 原監督も菅野の「顔」の変化を感じている一人だ。昨季は「マウンドでニヤつくな」と菅野に苦言を呈したこともあったが、今季初黒星となったこの日の投球には「気迫もあったし、全力を出した」と評価。連勝が止まったことも「またスタートすればいいんだよ」と意に介さなかった。


 今季は内海になかなか勝ち星がつかず、杉内や西村も本来の調子を取り戻せないなど台所事情は厳しい。そんななか、菅野は名実ともにG投手陣の「顔」となっている。