青池奈津子がヤンキースのキーマン直撃(4)
☆トニー・ペーニャベンチコーチ(56)
――田中について教えてほしい
ペーニャ:ああ、ベビー・ブル(雄牛)だね。
――ベビー・ブル?
ペーニャ:たくましいからだよ。ベビーだけど、強い。
――なぜベビーと呼ぶのか
ペーニャ:僕は、クロダを「ブル(雄牛)」って呼んでいるから、タナカは「ベビー・ブル」なんだ。クロダは僕にとっては、まるで牛のような強さがある。タナカも同じようなたくましさがあり、時々苦戦しても、それを見せない。彼はとても冷静で必ず自分を取り戻している。これから、さらに良くなることは疑う余地もない。
――彼と話すことは
ペーニャ:僕は、いつも彼をからかっているよ。トロントで彼がフードのついたトレーナーを着ていたんだ。いつものようにノバと一緒にダッグアウトに座っていた。そこで、僕がヒマワリの種を1袋分、フードの中に入れたんだ。彼は全く気が付かず、そこでノバが「寒いからフードをかぶろう」ってタナカに言ったんだ。何も知らなかったタナカは、種を丸ごと頭からかぶったんだよ。ハハハ。僕は、そうやって選手と楽しむのが好きなんだ。彼に楽しんでほしいんだ。時々、あまりにも彼ら(日本人)は静か過ぎるからね。言葉が話せないからだけかもしれない。タナカはスペイン語は分からないけど、英語はだいぶ理解している。どんな状況でも楽しむことができるもんさ。
――「田中はよく笑う」ってノバが言っていた
ペーニャ:彼は「ワル」だね。冗談だよ。
――種をかぶったときの田中は
ペーニャ:慌ててたよ。全身種まみれで、中に入って振り払わなければならないほどだったからね。でも笑ってたよ。
――田中から仕返しはあったか
ペーニャ:ノバ、そしてタナカは毎日、腰の辺りをつねってくる。僕がボーッとしている時にいつも不意打ちでくすぐるから、跳び上がっているんだけど、毎日やってくるよ。
――彼が苦労しているのは、どんなこと
ペーニャ:苦労するのは当然。新しい国に移り住んで、違う文化に触れて、知らない人たちに囲まれるって大変だよ。でも、この(ヤンキースの)クラブハウスには、彼を歓迎するやつらがたくさんいる。慣れてきたら、楽しめるようになってくる。
――田中はノバと仲が良さそうだ
ペーニャ:ああ、彼らは「ワル」だね。ハハハ。試合中はずっと隣同士で座っていて、僕が見るといつも何かしら話しているよ。
――通訳なしでか
ペーニャ:ああ、野球はユニバーサルな言語だね。打って、投げて、走って、守って…。
――田中をベビー・ブルと呼ぶのはトニーだけか
ペーニャ:ああ。たまに呼ぶと彼は振り返るよ(笑い)。
☆あおいけ・なつこ=埼玉県出身。青山学院大学卒業後、2003年に中部日本放送(CBC)にアナウンサーとして入社。06年3月末にCBCを退社後、フリーに転向。07年から渡米し、ニューヨークを拠点にメジャーリーグ取材を中心としたスポーツリポーター兼ライターとして本紙で「メジャー通信」を連載するなど幅広い活動を続けている。現在、NHKラジオ第1放送の音楽番組「ミュージックパトロール・チェキラ!」に海外エンターテインメント情報を紹介する現地リポーターとして出演中。愛称は「なっちゃん」。